私はつい先月、70歳になった。1954年の早や生まれである。同学年の多くは1953年生まれで、有名人では北の湖、落合博満、竹下景子、松平健などがいる。ジャーナリストの金平茂紀もそうで、その姿勢に共感できる人である。1954年生まれでは松任谷由実。私が初めて買ったレコードが旧姓荒井由実だった。
学年は違うが、元首相の安倍晋三、日本共産党前委員長の志位和夫、米俳優のデンゼル・ワシントンなどが1954年生まれだという。近年は、テレビでよく目にする人々の老け具合に自分を投影させて、自らの進退を考えることもある。老害は避けなければ、などと思うのだ。
1954年にあった事、歴史的事態が70年後の今を考えるヒントにもなる。映画「ゴジラ-1.0」が米アカデミー賞を受賞したと話題になったばかりだが、第1作が1954年11月に封切られている。同じ怪獣が70年も脚光を浴び続けていることを喜ぶべきか、悲しい状況なのか考え込んでしまう。なにせ、ゴジラはアメリカの水爆実験の影響で生まれたとされているのだ。
太平洋戦争終結(日本敗戦)から9年。3月1日にビキニ環礁で死の灰を浴びたマグロ漁船第五福竜丸の23名。「水爆ブラボー」の死の灰を浴びたのは第五福竜丸だけではない。54年末までに856隻が放射能汚染されたマグロを水揚げしたという。ゴジラは、ビキニ事件を告発する映画だったのだ。
自衛隊が発足したのが54年7月1日。その1か月前に国会で「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」を全会一致で可決している。先の大戦における日本軍の海外での蛮行記憶がまだ生々しかったのだ。その自衛隊ができたのはなぜか。そこのところが問題である。要はアメリカの世界戦略と、日本の保守政界の思惑が合致したから。自衛隊の名は今も変わらないが、実態は軍隊にほかならない。生まれは小さかったが、いまや軍事費世界第10位である。
中国と北朝鮮を意識してだそうだが、「自衛隊」が敵基地攻撃能力となる長射程ミサイルを多数、沖縄の諸島に配備するようになった。アメリカから武器を爆買いし、外国と共同開発する戦闘機の輸出を閣議決定ひとつで強行するという。かつて軍事費をGDPの1%以内に収めるなどと言ってきたことを、政権党はあっさりと投げ捨て、2022年度以降は驚異の軍事予算拡大に走っている。戦争好きの政治家たちの要求はとどまるところを知らない。国民のくらしなど目に入らないようだ。
自衛隊と同い年であることが、私の信条にけっこう大きく影響している。ゴジラ映画が次々と新作で蘇り続けることの意味もまた忘れてはならない。ちなみに、人同士も国同士もお互いは鏡。相手の顔つき、振舞いはこちらの態度に反応したものかもしれない。自らの姿勢で相手を変えることもできる。