この国のかたち
私は、農家の立場から、わが国農業の止まるところを知らない衰退と国民の食料自給力の減退に警鐘を鳴らし続けている。その対策として、国の農業予算の4倍増、5倍増が必要だと考える者だ。もっとも重視すべきは新たな農家育成のことで、そのために毎年1兆円の…
食料・農業・農村基本法改定案の審議について、国会審議が続いている。朝日と赤旗で、その取り上げ方を比べてみようと、4月1、2、3、4、5と5日間の記事を確認してみた。朝日はこの間、1行も記事にしていない。対して赤旗は1日、3日、4日、5日とほぼ連日取り…
今日の記述は少々長くなる。私の危機感の表れだ。 食料・農業・農村基本法の改定案が3月26日、衆議院で審議入りした。この改定案は、わが国の未来を危うくしかねない危険な内容である。この法案どおりなら、国産食料の確保を完全に放棄するに等しい。座視し…
私はつい先月、70歳になった。1954年の早や生まれである。同学年の多くは1953年生まれで、有名人では北の湖、落合博満、竹下景子、松平健などがいる。ジャーナリストの金平茂紀もそうで、その姿勢に共感できる人である。1954年生まれでは松任谷由実。私が初…
政府が今国会で改定をめざす新農業基本法「食料・農業・農村基本法」には、食料自給率向上が明記されず、国策としては放棄される内容になっている。国民の食料確保を、政府の義務ではなく「農業者その他の関係者が取り組むべき課題」として農業者の責任に落…
朝日6日朝刊から、いくつかを拾ってコメントしてみたい。 ▶ 能登地震の死者が94人になった。負傷者464人、行方不明者1人、連絡の取れない安否不明者222人。安否不明者については、氏名を公表すれば所在が分かる例が多いとあり、連絡を取れないことが不安を増…
年明け早々大震災のニュースに愕然としたが、その災害の全貌は未だ明らかにならない。4日現在、輪島、珠洲両市では行方不明者数すら分からず、多数の救援要請に応えられていないという。能登半島の突端にある珠洲市は家屋の9割が全壊またはほぼ全壊で、壊滅…
このブログを6月に始めてから7カ月が過ぎた。まもなく古希の老農民が、「怒りと希望」という相反する情動を動機として書き綴ってきた。 文字にすることで、70年生きた私にどの程度の蓄積ができたか、を自分の指と目で確かめる狙いもあった。これまでの結果と…
2023年は憂うべき事柄の、異常に多い年となった。振り返ることが苦痛にも思えるが、きちんと記憶に残さないといけない。 ▶健康保険証が「2024年末に廃止」される。国民生活の混乱は増すばかり。マイナ保険証の11月の利用率はわずか4.33%。全国保険医団体連…
このブログを綴る、そもそもの動機は、怒りである。 この国のありように、いくつもの怒りを覚えるのだ。 なぜ、戦争準備のためにこれほど莫大な税金を使うのか。戦後78年、なぜ米軍のために大枚をはたいて基地を提供し続けるのか。沖縄の人々の気持ちを逆な…
▶ ニューヨークの国連本部で開かれていた核兵器禁止条約第2回締約国会議が1日、閉幕した。2021年1月に発効した条約には、93カ国・地域が署名し、うち69カ国・地域が批准している。今回の会議には加盟している59カ国・地域が参加したほか、35カ国がオブザー…
今日11月26日の朝日新聞の「声 (Voice)」、18歳高校生の『議論重ね自分の意見持つ教育を』に注目した。若い人の論理的で説得力のある意見表明に明るい希望を見た思いがした。 「両親は日本人とアイルランド人です。日本の高校に留学し、教育の質は高く、特に…
もうかるとか、もうからないとか、その境界線や基準はどこにあるのだろう。こういう言葉使いをする人たちは、その基準をきちんと意識しているのか。自覚があるのかどうか疑わしい。 昔にも、儲け話が好きな農民はいたようだ。田畑をかたに投資して一獲千金を…
辺野古新基地をめぐって国の専横が極まっているが、これは “自治” を破壊する行為である。本来、国と地方自治体は対等の関係にあるのだが、こと日米安保に関わる問題で国は一切妥協しようとしない。沖縄の民意を全く顧みずに推し進められる南西諸島の軍事基…
朝日新聞に「序破急」というコラムがある。 ちなみに、序破急(じょはきゅう)とは何だろうと調べてみた。元は雅楽から生まれ、古い芸道の世界に及んだ言葉で、序(ゆっくりで自由なスタート)、破(テンポアップする中盤)、急(クライマックス、そして終わり…
AERAdot.に、政治経済評論家・元経産省官僚 古賀茂明さんの、辺野古新基地建設に関わる最高裁判決について「国が司法と組んで『黙らせる』狡猾手口」が載った。 防衛省の辺野古新基地設計変更申請を沖縄県が不承認としたことに対して、国土交通省が県に承認…
新聞報道に怒りを覚えることが多くなってきた。年齢的にも気が短くなって、情動に抑制が効かなくなってきたのかもしれない。自省しなければと思いつつ、この国指導者たちの思想に合点がいかないことが多いのだ。 零細業者や個人事業主に否応なく消費税負担を…
ここ茨城の地は、日本最初の原発が稼働した場所である。日本原電による東海原子力発電所だ。東海第二原発は、2011年3月11日の地震と津波でその後53時間、外部電源を失ってあわや大事故の寸前だった。現場の綱渡りの対応で事故は免れたが、「福島のようになら…
インボイス制度というものが始まろうとしている。この制度、財務省のねらいはマイナンバーカードのそれと根っこでつながっている。 この制度は、商品を仕入れる(あるいは業務を委託する)際に、仕入れ先(業務委託先)に「適格請求書」を発行させて仕入れ税額を…
私は、マイナンバーカードを持っていない。必要ないと思っているし、むしろ持ちたくない。だから今後も申請しようと思わない。国にも大企業にも個人情報を一方的に利用されたくない。そう思う人はけっこう多いのではないか。 マイナンバー制度は、国民一人一…
過去から今、未来へと移る時の流れ、血縁と地縁に連なった人々の絆、仕事とくらし。原発事故は農民からそのすべてを奪った。(その二)で、そう書いた。 すべてを奪われた人々は「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」と裁判に訴えた。原告4,000人の訴えは「…
原発事故で失ったものの一つに、農の技術のことがある。 放射性物質は東北地方南部から関東各地の山林にも降り注いだ。林床の腐葉土表層が高濃度の放射性物質に汚染され、ここに育つ林木がこれを吸い上げてしまったため、林床の腐葉土とともに、2011年秋以降…
農民は、人生のうちの圧倒的長時間を屋外で過ごす。 野良仕事中、ふと一息作業の手を止めたとき、視界に入るすべてが農民にとってかけがえのないものになる。目にする景色のすべてが日々のくらしに伴走し、人生の色濃い時間として体に刻まれる。農地と里山、…
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による大津波で、福島第一原子力発電所の爆発事故が起こった。広範囲で深刻な放射能汚染によって福島県民多数が避難を強いられ、ふるさとを失った。 そのわずかひと月前、私は34年勤務した鯉淵学園農業…
私は新聞を3紙購読している。日刊紙を2紙と、タブロイド判の週刊紙「農民」だ。日刊紙は、毎朝1~1時間半かけて2紙を読むのを日課にしている。 週刊紙「農民」は、農民運動全国連合会(農民連)の機関紙であるが、他紙が報じないリアルな農業実態を知ること…