この国のかたち(3) 消費税はなんのために導入されたか

 インボイス制度というものが始まろうとしている。この制度、財務省のねらいはマイナンバーカードのそれと根っこでつながっている。

 この制度は、商品を仕入れる(あるいは業務を委託する)際に、仕入れ先(業務委託先)に「適格請求書」を発行させて仕入れ税額を控除できるようにする仕組みである。適格請求書を発行できるのは「消費税を納めますよ」と課税事業者登録した事業者である。適格請求書を発行できない下請け事業者は、商品を買ってもらえないとか、仕事を回してもらえなくなる恐れが出てくる。

 消費税負担を免ぜられている売上げ1,000万円未満の小規模事業者や個人事業主にも消費税を負担させようとするもので、俳優・声優、漫画家やイラストレーターなどがこの制度に「絶対反対」の声を上げている。「インボイスが始まると廃業せざるを得ない。所得わずか300万円の10%を負担したら暮らしていけない」の声は切実である。新たな税負担にさらされる対象は広く、個人営業の建設事業者、個人商店などとともに、シルバー人材センターに登録する人や農家もこの制度導入に振り回されている。

 この制度は酷薄無慈悲である。小規模事業者、個人事業者はくらしと仕事の両方で税負担を強いられる。得をするのが誰か明らかだろう。そもそも消費税そのものが財界・大企業の求めによってできた税であった。

 

 1989年に導入された消費税の税収累計は35年間で500兆円余。その陰で、法人税、法人住民税、法人事業税の減収は300兆円。この法人税減収は、1990年以降現在までに何度も行なわれた法人税率引き下げの結果である。所得税最高税率が引き下げられた結果、高額所得者(金持ち)ほど税負担が軽くなってしまった。税率軽減によって所得税(と住民税)の減収も35年間累計で約300兆円だという。

 要するに、大企業と金持ちが負担すべき税金を、広く国民全体に肩代わりさせたのが消費税の本質である。法人税所得税累進課税といい、基本は収入が多いほど多く負担するしくみであるが、消費税は収入の多寡に関係なく課税される「逆累進性」の性格を持つ。貧しい人ほど負担が重くなるのだ。消費税の導入以前は、先進国の中でも所得格差の小さな国だった日本が、今や突出した「貧富の差の大きな国」になってしまった。貧しさゆえに日に2食しか食べられない国民が増えた、こどもの11.5%が貧困家庭にいる、という。

 その原因は明瞭である。財界奉仕を旨とする我が国の政治が今の日本にしたのだ。国民第一の国に戻すためにも、消費税のあり方を根本から見直す必要がある。インボイス制度など、もってのほかである。