2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

徒然に(5) 賢人に学ぶ(三)

もう一つのディストピアSFに、ジョージ・オーウエルの『1984年』(1949刊)がある。17歳の時に読んで、こんな恐ろしい世界はごめんだと強く思った。 高校2年、夏休みの英語の宿題で、オーウエルの『Animal Farm(動物農場)』(1945刊) 数十ページ分を「和訳せよ…

徒然に(5) 賢人に学ぶ(二)

切り口は異なるが、賢人に学ぶもう一つの方法。過去に著わされた「未来を描いたSF小説や漫画」などから、人類の叡智と愚かさの両面を学ぶ方法である。 例えば、アイザック・アシモフの『鋼鉄都市』(1954刊)。ロボット工学三原則に縛られたロボットに殺人が犯…

徒然に(5) 賢人に学ぶ(一)

壮年になってから、自分の発言、行動に正当性があるか、何か欠陥があるかもしれないと徐々に不安が募るようになった。「これが正義だ」と自分の主張を一方的に押し付ける増上慢に陥ってはいないかと、そいう煩悶だった。 はるか昔に父親に言われた言葉が蘇っ…

徒然に(4) 紙の本がいい(その二)

いまや小説も漫画も、スマホやパソコン画面で読めるそうだが、なんとも気に入らない。紙の本がいいに決まっている。俳優たちがテレビで「セリフは紙の台本でないと覚えられない」と口々に言っていた。そうだろうと思う。 まちの本屋が消えつつあるという。人…

徒然に(4) 紙の本がいい(その一)

もうだいぶ前からだが、妻からくり返し小言を言われている。寝室に散らかっている無数の本を “片付けてくれ”というのである。今秋こそは、と思う。 私の癖だが、面白いと思った本は何度も読み返してしまうので、カバーは外れ、表紙は反り返ってくたくたにな…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その八)

除草剤の、環境生物への影響がとても気にかかる。 今、畑地や住宅周辺で使う除草剤が、市民が日用品を買う町なかのD.I.Y店やドラッグストアで難なく買える。テレビでも「根こそぎ枯れる」などと消費を煽り、ネットで誰でもいつでも買えるこの風潮がとても気…

環境問題と農業(3) 環境再生型有機農業(その三)

不耕起栽培は、2003年から露地ナスでも試みている。 ボカシ施肥し、ロータリー耕耘後に畝立て黒マルチした一般的な有機栽培(対照区)との比較で、鍬溝にボカシ施肥して埋め戻し、藁マルチした不耕起栽培(部分耕耘、あるいは半不耕起)を、5年間連作で試験した…

環境問題と農業(3) 環境再生型有機農業(その二)

家の前の畑2反3畝(23アール)を3年前から借地して「自給有機農園+ちょっと販売」を行っている。5アールほどを通路、資材置き場、堆肥場、育苗ハウスなどに使い、13アールくらいを野菜畑、5アールを無農薬果樹園にしている。 かつて農業専門学校の教員だった…

環境問題と農業(3) 環境再生型有機農業(その一)

農業は環境に何をしたのか(その七)で、世界の土壌劣化が食料危機につながるだろうことを書いた。国連「国際土壌の10年」プロジェクトで、土壌劣化を止めて農地を蘇らせる運動の今年は9年目であるが、わが国の対応が鈍いことも指摘した。 だが、希望はある…

この国のかたち(5) 政府が公然と差別する、そんな国の私たち

AERAdot.に、政治経済評論家・元経産省官僚 古賀茂明さんの、辺野古新基地建設に関わる最高裁判決について「国が司法と組んで『黙らせる』狡猾手口」が載った。 防衛省の辺野古新基地設計変更申請を沖縄県が不承認としたことに対して、国土交通省が県に承認…

環境問題と農業(2) 有機農業に転換する意義(その三)

有機農業に換えれば生物多様性は守られるのか。 二つ目は、地上部の生きものについて考えてみよう。 私は過去30年間、自身の有機栽培の畑のほか、有機農家の田畑を数多く見てきた。慣行農家の田畑も同時に観察してきたので、地上部の生きものの違いはよく分…

環境問題と農業(2) 有機農業に転換する意義(その二)

有機農業に換えれば生物種の絶滅は防げるのか。 この疑問にも答えなければならないが、“農薬を使わなければ農地内外の生きものが死ぬことはない” というような単純な問題ではない。 まず一つ目として、土の生命力 について考えてみよう。 数十年前の研究成果…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その七)

農業生産が直接的に関わる4つ目の環境問題は何か。 2015年、国連食糧農業機関(FAO)は「すでに世界の土壌資源の33%は劣化していて、新たな取り組みを始めない限り2050年には一人当たりの耕作可能地は、1960年水準の4分の1になる」と警告した。このままでは…

徒然に(3) 学び直し

遠く萩と周防に旧友3人を訪ねる旅に、武蔵野のY君と美濃のU君が同行してくれたのだが、二人とも “学び直し” に関わっている。 Y君は東京都の農業技術職を65歳で退職した後、受験勉強に精出して1年後に大学生になった。3年生の今年から卒論にとりかかっている…

環境問題と農業(2) 有機農業に転換する意義(その一)

化成肥料をやめれば環境負荷は減るのか。有機肥料だと温室効果ガスは減るのか、窒素とリンの投入量は減らせるのか。きっと、そんな疑問を持つ人は多いだろう。一つひとつ確認してみよう。 化成肥料はその原料となる鉱物の採掘、海を越えた輸送、工場での肥料…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その六)

農業生産が直接的に関わる3つ目の環境問題が、窒素とリンの環境汚染である。人が投下した窒素とリンが、自然界で循環する量を大幅に超えたことで、主に水圏の生態系を損なってしまった。海洋の汚染は、気候変動による海水温の変動と合わせ、漁獲量の激減につ…

徒然に(2) 友を訪ねて

“朋(とも)遠方より来る。また楽しからずや” と古典にある。この気分を十分に味わう旅をした。“友を誘い、古き友らを遠方に訪ねる。大いに楽しからずや”。萩と周防への旅だった。 48年前に常陸野の小さな農学校で出会い、寝食を共にし、兄弟姉妹以上の親密な…

農と暮らしの技(1) 藁(わら)の話(その二)

昭和30年(1955年)の頃までは、菰(こも)編みが米づくり農家には必須の作業だった。米俵が必要だったからだ。3尺幅の菰を円筒形に巻きつなげ、空いた両端を円形の桟俵(さんだわら)でふさぐと俵ができる。入れるコメの量は4斗(40升、約72リットル)、1斗枡で量っ…

この国のかたち(4) 弱者差別が行き過ぎていないか

新聞報道に怒りを覚えることが多くなってきた。年齢的にも気が短くなって、情動に抑制が効かなくなってきたのかもしれない。自省しなければと思いつつ、この国指導者たちの思想に合点がいかないことが多いのだ。 零細業者や個人事業主に否応なく消費税負担を…