2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その二、20年後)

わが国の農家数減少の経過をあらためて、確認してみよう。 農林業センサス (農林水産省) によると、1950年に1,350万人だったものが、1975年490万人、2000年240万人、そして2022年は123万人に減ってしまった。1950年比で91%減である。ちなみに食料自給率は19…

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その一、三面六臂)

農は3つの顔を持っている。食料生産だけが農の顔ではない。 農産物生産が農業の表面だとしたら、その側面には農民とその家族 (あるいは従業員) という主体者がいて、その主体者が担う農山村という地域 (社会と環境) がある。 唐突だが、一つ喩えを試みる。仏…

自然共生の農と食を未来人の手に(1) 農の再生に向けて

これまで、日本の農と食の危機的状況、農にかかわる環境の諸問題について縷々述べてきた。その問題点をもう一度ここで確認し、その解決のためには何が必要かをあらためて整理してみたい。 その一。日本の食料自給率が38%にまで落ち込み、諸外国からの輸入に…

農と暮らしの技(5) 箱膳

幼少時の生家のくらしを思い出すと、その後60年余の日本農業と農村の激変がよく分かる。意識すべきは、農村変貌の行き着く先が未来人の生存を脅かすようであってはならない、ということ。「ほんのちょっと昔の農とくらし」を掘り起こす試みの真意は、その激…

徒然に(7) 老化、身体障がいのこと

近々古希を迎える。健康保険証も高齢者用に更新され窓口2割負担になるし、運転免許証更新のため昨年末に高齢者講習を受けてきた。老人扱いされるのは仕方がないと自覚するのは、この身体に否応なく老いを感じるからでもある。 その一つが聴力の低下である。…

有機農業とその技術(7) 有機農法の新展開のためには

今後の日本農業の発展、いや存続のために欠かせない条件がある。それは、有機農業スペシャリスト、有機農業コーディネーターの存在である。 私は2011年から10年間、農水省が行う全国の農業改良普及指導員を対象とした「有機農業研修」の講師を務めてきた。そ…

有機農業とその技術(6) 有機農法の多様性(その五、自然農法)

自然農、自然農法などと実践農家が自称するが、これらも有機農業の内にあり有機農法の一画をなしている。では何が違うのか。その手法にどのような特徴があるのか。 「自然農」は不耕起と無施肥が基本原則である。人が耕すことは自然の摂理に反し、自然を傷つ…

有機農業とその技術(6) 有機農法の多様性(その四、低投入持続的農業)

有機農業の別名は「低投入持続的農業」である。有機農業の「有機」は、さまざまな生命との調和と共生を意味し、農家が採る手法、農の生産とくらしの過程を表している。個々の農の現場を認識する際の表現といってもよい。有機農家は自らの農を「有機農業」と…

有機農業とその技術(6) 有機農法の多様性(その三)

量販型有機農法は「もうかる有機農業」モデルとして、指導行政が真っ先に言及する。国が目標とするスマート有機農業、マニュアル型有機農業に合致すると考えるからだろう。だが、この有機農法には、いくつかの重要な問題点が存在する。以下に列記してみよう…

有機農業とその技術(6) 有機農法の多様性(その二)

▶ 日本の有機農業には、歴史的に一本の太い背骨のようなものが通っている。この中心柱のような有機農業は、表の右から2番目である。家畜糞から近辺の草木由来有機物、家庭生ゴミなども有効に使う有機農法である。稲作と多品目畑作物の栽培のかたわら家畜飼育…

この国のかたち(12) 新聞紙面から

朝日6日朝刊から、いくつかを拾ってコメントしてみたい。 ▶ 能登地震の死者が94人になった。負傷者464人、行方不明者1人、連絡の取れない安否不明者222人。安否不明者については、氏名を公表すれば所在が分かる例が多いとあり、連絡を取れないことが不安を増…

有機農業とその技術(6) 有機農法の多様性(その一)

有機農業という言葉は、化学合成農薬や化成肥料を使わないで行う “農家経営のスタイル” を表しており、有機農業でありたいとする農家の考え方や暮らし方をも含んだ用語である。 対して、有機農業の技術技能、あるいは生産手法の側面だけをいう場合は「有機農…

小さな農と未来のことと …… 2024年に希望を(第100話)

年明け早々大震災のニュースに愕然としたが、その災害の全貌は未だ明らかにならない。4日現在、輪島、珠洲両市では行方不明者数すら分からず、多数の救援要請に応えられていないという。能登半島の突端にある珠洲市は家屋の9割が全壊またはほぼ全壊で、壊滅…