2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

徒然に(6) 糞考(その一、糞食)

20年ほど前に買っておきながら読まずにいた本が、“積読(つんどく)” の山の下から出てきた。読み始めたらなんともおもしろい。中公新書『ふしぎの博物誌』2003。編著者河合雅雄さんの冒頭の1編「究極のリサイクル---糞食」にまず食いついてしまった。 「糞は…

農と暮らしの技(3) 家畜のいるくらし(その一)

1960年代以降、日本の農家のくらしはずいぶん大きく変わった。その一つが家畜のことである。かつての日本の農村では、なにがしかの家畜を飼う家が多かった。馬、牛、山羊、豚、鶏などだ。それぞれの飼育数は、家畜種、農家の経済や家族数、耕作する田畑の規…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その七、ボカシ肥料Ⅱ)

ボカシ肥料は、身近に手に入る次のような材料を混ぜ合わせて作る。 ・粒状または粉状の廃棄有機物、農業副産物、食品製造残さ、など 米ヌカ、小麦ヌカ(ふすま)、油カス、魚カス、オカラ乾物、クズ大豆、クズ麦、生ゴミ発酵処理物、発酵鶏糞、果汁搾りカス、…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その七、ボカシ肥料Ⅰ)

米ヌカや油カス、魚粉などは、そのまま肥料として農地に投入することもできるが、窒素成分が急激に溶けだして栽培初期に「効き過ぎ」たり「生育障害」を発生させてしまうことがある。そこで昔の人は、そうした有機物に土を混ぜて発酵させたものを使い、肥効…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その十)

現代人が未来人のために残すべきものに、地下資源のことがある。現代の繁栄は鉱物資源の先食いに依るものであり、未来人からはその罪を糾弾されるにちがいない。農業について言えば、肥料資源のリン鉱石やカリウム原石などについて、いずれきっと責任を問わ…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その六、ミミズ)

地球の表面に薄く存在する土壌は、実はとても繊細な構造物だといわれる。恒常的に動植物と微生物のはたらきによって生成と損耗を繰り返している。その生成に最も大きなはたらきをしているのがミミズである。ミミズがいなくなると、土は土としての性質を失っ…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その五、腐葉土と床土)

「農と暮らしの技(2)肥土(苗床の土)」で、育苗用土のことに触れた。ここではもっと掘り下げて書いてみたい。 育苗用土にもっとも一般的に使われたのが腐葉土である。材料は落葉広葉樹の落ち葉のほかに、西南日本では常緑広葉樹の落ち葉が使えるし、海辺…

農と暮らしの技(2) 肥土(苗床の土)

「土を肥やす」と、昔の人は言った。“肥えた土が作物を育てる” という考え方がかつては一般的であったことの証明だ。土づくりのことである。 「苗半作」という格言があるように、育苗の出来が重要視された。だから、苗床の土(育苗用土、床土)をしっかり作っ…

有機農家を育てる(7) 農業予算の4倍増、5倍増が必要だ

7月7日に「この国のかたち(1)もうかる農業?」で、1980年(昭和55年)と2022年を比べて国の農業予算額が大きく目減りしたことを述べた。額が減っただけでなく、国の予算総額に占める農業予算額の割合が気になったので、あらためて調べてみた。 1980年の国家…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その四、植物質堆肥)

日本土壌協会という団体がある。土壌の健全化や環境保全型農業の推進などを目的にしている専門家集団で、土壌医の認定も活動の一つだ。この土壌協会が堆肥の優劣を確認する方法として「堆肥に直接コマツナの種を蒔いてみよう」と言っている。順調に発芽する…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その九)

もう一つ、農業関係者がすぐにでも対策しなければならない課題がある。貴重な有機物資源をうまく活用できないで無為に廃棄し、しかもその廃棄過程で大量のCO2を排出してしまっていることだ。 30年近い有機農業のかかわりで、とても有効な有機肥料素材が身近…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その三、家畜糞堆肥)

作物栽培の現場の土づくりは、どうしたらいいのだろう。 田畑の土づくりは堆肥の施用が基本になるのだが、その使い方にはいくつか注意すべき点がある。近年の堆肥の特徴と、いくつかの問題点を確認してみよう。 もっとも多く使われているのは牛糞堆肥(堆厩肥…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その二)

自然界で土を作っているのは誰なのか。 どのようにして土ができてくるか、その生成過程を知るには、腐葉土や堆肥を作る経験が役に立つ。腐葉土のでき方を再現してみよう。 落葉樹の落ち葉を集める過程で、その年の落ち葉のほかに地表の「腐葉」も少量が混ざ…

この国のかたち(6) 未来人のためにすべきこと

朝日新聞に「序破急」というコラムがある。 ちなみに、序破急(じょはきゅう)とは何だろうと調べてみた。元は雅楽から生まれ、古い芸道の世界に及んだ言葉で、序(ゆっくりで自由なスタート)、破(テンポアップする中盤)、急(クライマックス、そして終わり…

有機農業とその技術(3) 土づくり(その一)

土とは何か、土はそもそもどのようにしてできたものか、その成り立ちを知ることから始めなくてはならない。 生物のいる星、地球には土があるが、生物のいない月には土がない。アポロ11号のアームストロング船長が月に最初の第1歩を下ろした時、舞い上がった…

有機農業とその技術(2) 有機農法の要点

求めるべき今後の農のあり方、より適切な有機農業の姿を明らかにするために、まずは有機農業の目的にかなう技術、農法の要点を整理してみたい。有機農業の技術の基本は次の5項目に集約できる。この5項目と先に示した農法5類型の特徴を交差させて一つひとつ確…

有機農業とその技術(1) はじめに 

これまでの農業のあり方は、地球環境を悪化の方向に促す「負の役割」を担ってしまった。他産業と連なって地球温暖化・気候危機に加担し、生き物の大量絶滅の主犯となり、農地の劣化と水圏汚染を進めて未来の食料生産を危機に陥れた。早急に農法を改めないと…

小さな農と未来のことと …… 便利とは何か

これが50話目になる。 6月21日に書き始めて、これまで3カ月余。だいたい2日に1話のペースで書き進めてきたが、この後もまだまだ書きたいことはたくさんある。自然環境と共生・調和できる有機農業の技術のこと、衰退する日本農業と後継者難への対策のこと、5…