有機農家を育てる(7) 農業予算の4倍増、5倍増が必要だ

 7月7日に「この国のかたち(1)もうかる農業?」で、1980年(昭和55年)と2022年を比べて国の農業予算額が大きく目減りしたことを述べた。額が減っただけでなく、国の予算総額に占める農業予算額の割合が気になったので、あらためて調べてみた。

 1980年の国家予算が42.59兆円で、農業予算は3.58兆円(8.4%)だった。42年後の2022年は国家予算107.6兆円、うち農業予算は2.27兆円でその割合はなんと2.1%のみ。国の予算に占める割合は4分の1にまで縮小されていた。

 この事実は衝撃である。

 農業者、農業関係者はこうした事実をどこまで認識しているだろうか。

 仮に、農業予算を1980年と同じ8.4%にしたらいくらになるか。107.6兆円 × 0.084 = 9.0兆円、現状の4倍額である。20~30年後の国民の食を保障するには、このくらいの予算額が必要なのではないか。絶対に必要だ。

 別の切り口でわが国の農業予算の悲惨さを確認してみたい。

 農水省「主要国の農業関連主要指標」による「国民一人当たりの農業予算(2019年)」では、アメリカ30,288円、フランス27,929円、中国25,269円、韓国36,740円であるが、日本は13,598円。中国の半分、韓国の3分の1でしかない。農業所得に占める政府補助金の割合は、スイス92.5%、ドイツ77%、フランス64%、EU平均50.4%に比べて、日本はわずか30.2%。この国の農業軽視の姿勢、極まれり。


 こんな脆弱な農業政策では、農家が後継者を育てようとはとても思わない。農業者数は2023年が116万人、20年後は30万人に減るという驚くべき予測。離農者激増の要因はこうした国の姿勢にある。

 政府は2024年、食料・農業・農村基本法の改定に向けて準備を進めているが、これまでの食料自給率向上の方針を投げ捨てようとしている。国は国産食料の確保はもう止めるのだ。農家の激減に歯止めをかけられない、農家を増やすことなどできないと諦めるつもりなのだ。このままでは、来年の基本法改定は国民の食に「もう責任を持てません」という宣言になる。

 この国、政府の姿勢に満腔の怒りを表明したい。この政府のままでは30年後、孫やひ孫の世代は国産食料を満足に口にできない、どころか飢餓の国に暮らすことになりかねない。食料自給率を上げること、農家を増やすこと、そのためには農業予算を4倍増、5倍増にする必要があることを、強く訴えたい。