2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

有機農業とその技術(5) 技術展開(接ぎ木、その一)

私は若いころ、果菜類の接ぎ木を研究課題にしていた。師匠の丸川慎三先生がウリ類の接ぎ木に使う台木カボチャの研究者だった。キュウリやトマトなど施設栽培で生じる土壌伝染性病害(連作障害)の対策として、当時は殺菌殺虫剤(毒ガス)の土壌処理か抵抗性…

有機農業とその技術(4) 技術の自給(その四、育苗)

近年、育苗と栽培の分業化が進んで、自家で苗を育てずに購入する農家が増えてしまった。育苗の手間を省こうというのだろうが、結果的に苗づくりの技術が農家の手から奪われつつある。苗を買うのは主にトマトやナスなど果菜類。水稲苗を農協に委ねてしまう例…

この国のかたち(9) クリティカルシンキング(批判的思考)

今日11月26日の朝日新聞の「声 (Voice)」、18歳高校生の『議論重ね自分の意見持つ教育を』に注目した。若い人の論理的で説得力のある意見表明に明るい希望を見た思いがした。 「両親は日本人とアイルランド人です。日本の高校に留学し、教育の質は高く、特に…

有機農業とその技術(4) 技術の自給(その三、採種)

近年、野菜などの種子を買うと、袋裏面の種子 “生産地” 欄にアメリカ、オーストラリア、インド、韓国などと表示されている。私が今年買った種子のうちキャベツだけ香川県というのがあって少しホッとしたが、市販される野菜種子のほとんどが外国産になってし…

この国のかたち(8) もうかる農業?(その二)

もうかるとか、もうからないとか、その境界線や基準はどこにあるのだろう。こういう言葉使いをする人たちは、その基準をきちんと意識しているのか。自覚があるのかどうか疑わしい。 昔にも、儲け話が好きな農民はいたようだ。田畑をかたに投資して一獲千金を…

有機農業とその技術(4) 技術の自給(その二)

今回の話題は有機農業のことではないが、その思想に通ずるものがあるので取り上げてみたい。新聞「農民」(11/13) に「マイペース酪農が日韓環境省を受賞」の記事があった。日韓国際環境賞は、毎日新聞と朝鮮日報社主催の賞。 うかつながら、マイペース酪農と…

有機農業とその技術(4) 技術の自給(その一)

技術を金で買う、技術を第三者に委ね管理されている、現代農業の重大な欠陥がそこにあるのではないか。私がずっと抱いてきた懸念である。 農業がもうからない商売であることは世界共通である。国や地域の経済発展レベルとは無関係で、資本主義経済においては…

この国のかたち(7) 自治の危機

辺野古新基地をめぐって国の専横が極まっているが、これは “自治” を破壊する行為である。本来、国と地方自治体は対等の関係にあるのだが、こと日米安保に関わる問題で国は一切妥協しようとしない。沖縄の民意を全く顧みずに推し進められる南西諸島の軍事基…

農と暮らしの技(3) 家畜のいるくらし(その四)

前職の鯉淵学園にはかつて、敷地内に20棟ほどの職員宿舎があった。満蒙開拓青少年義勇軍幹部訓練所の職員宿舎として、昭和13年 (1938) 築18坪平屋建て。私は教職員時代の1977年から1998年まで、当初は一人で、5年目から18年間は家族とともにこの老朽宿舎に住…

農と暮らしの技(3) 家畜のいるくらし(その三)

昭和37年 (1962) に葉タバコ栽培を始めたが、それまでは養蚕をしていた。私は8歳だった。蚕 (かいこ) だけは、私は好きになれなかった。茶の間にも蚕棚を置くことがあって、桑葉を食むシャワシャワという音が今も耳に残っている。自分の食事と重なるときは特…

農と暮らしの技(3) 家畜のいるくらし(その二)

昭和30~40年代(1955~1970)、生家にはいつも家畜がいた。私が物心つき始めたころには黒毛の牝牛と鶏が20羽くらいいたし、雌山羊あるいは雌豚も飼っていた。一時期はつがいの兎がいて、池にはいつも鯉がいた。 それぞれの家畜飼育の時期は今となっては記憶が…

ガザ ――人間性の危機、今すぐ停戦を

ガザの死者が10,000人を超え、うち子どもが4,100人以上 (11/7) イスラエルは大虐殺をやめて、今すぐに停戦せよ。 「パレスチナ自治区ガザの悪夢は人道的危機を超える人間性の危機だ」「子どもの墓場と化しつつある」国連事務総長グテレス氏の言葉が、この事…

徒然に(6) 糞考(その三、糞肥つづき)

前話に載せきれなかった『農民哀史』の一節をもう一つ二つ。 「父と小作料問題を話す。一反八畝三歩で収穫が七俵(約420㎏)。そのうち小作料が四俵と一斗一升(約260㎏、収穫の60%超)とは馬鹿な話だ」 「… 尋常四年の妹は、二歳になった実(みのる)を背負って…

徒然に(6) 糞考(その二、糞肥)

洋の東西を問わず、家畜糞が作物の栄養源になることは知られていた。ただし、小屋飼いなら糞尿を確保できるが、放し飼いの場合は容易ではない。放牧が主体の欧州では、放牧中の畜糞で肥やした後に作物栽培する三圃式の方法があった。 家畜糞が肥料になるなら…