徒然に

徒然に(16) 取り残された人を想えるか

年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず(劉廷芝りゅうていし) 花は年ごとに変わることなく咲くが、人の境遇は年ごとに変化していく。まさに「人」の部分はそのようだ。自身が歳を重ねてそう思う。数年前から難聴が進み、とうとう今月初めに聴覚障害者手…

徒然に(16) 沖縄全戦没者追悼式に思う

昨日、6月23日は沖縄戦の犠牲者を悼む「慰霊の日」だった。戦後79年を経てなお、沖縄が平和の島となっていない現実を突きつけられている。日本にある米軍基地の7割が今も沖縄にあるほか、近年は自衛隊駐屯地が増え、新たにミサイル部隊の配置があるなど、前…

徒然に(15) 鬱々として

老化とはこういうことなのか。このごろ自分の身体の変化に心が追いついていかない。なかなか得心がいかないで、つい鬱々(うつうつ)としてしまうのだ。この鬱々こそが老化現象を象徴しているように思う。 耳が壊れて自分の声さえよく聞こえない。周りに他の…

間が空いてしまいました。

4月19日を最後に、その後1カ月以上も間を空けてしまいました。この間、実はいろいろありまして、とても忙しい日々でした。1,000字の文章を綴る気持ちの余裕を持てなかったのです。 春の農事にあくせくしていました。夏野菜の植え付けがようやく一段落しまし…

徒然に(13) 新たな出会い

耳の故障が進み、人との会話がますます困難になってきたので、別のコミュニケーション方法が必要になった。内耳のセンサー崩壊が進めば、補聴器という補助手段には限界があると分かった。音声をスマホの画面に文字で表示するアプリも試したが、スマホ画面ば…

徒然に(12) 春の野菜考

また春の端境期がやってきた。4月から5月半ばくらいまで、穫れる野菜の種類が激減する。ところが、スーパーマーケットには種類豊富な野菜が所狭しと並んでいる。これは北から南からさまざまな野菜が届き、温室育ちのナスやキュウリ、トマトなども流通してい…

徒然に(11) 聞く、教わる

子どものころ、親に教わったことは多かったが、覚えていることは限られる。父親はやさしい人だったが時に厳しく訓戒を垂れることもあった。こちらが不始末したとか、不誠実だったときだから親として当然の説諭だったと、子どもにも納得できた。その訓戒の中…

徒然に(10) 3月に思う

この冬は明らかに暖冬だったが、3月に入って激しい気温変化に戸惑っている。故郷は、今頃になって降雪が続いていて積雪がまだ1mもあるという。 3月はさまざまな歴史的事象、事件、事故があった月。記憶を振り返り、さらに学び直しのためにいくつか記録を掘…

徒然に(9) 「核」雑感

▶ 70年前の今日3月1日、マーシャル諸島のビキニ環礁で米国が行った水爆実験によって、静岡県のマグロ漁船第五福竜丸が被爆した。死の灰を浴びた漁船員の久保山愛吉さんが3人の愛娘を残して40歳の生涯を閉じたことは、3度目の核被爆者と呼ばれた。私が生まれ…

徒然に(8) 新聞を読む

新聞は紙であり印刷された活字であるが、単に日々の最新情報を提供してくれるだけの「物」ではない。国内のみならず世界各地の人々のくらしや生き様を知り、そうした人々の声が聴ける「開かれた窓」である。いい話もあればつらい記事もある。毎朝、人々の生…

徒然に(7) 老化、身体障がいのこと

近々古希を迎える。健康保険証も高齢者用に更新され窓口2割負担になるし、運転免許証更新のため昨年末に高齢者講習を受けてきた。老人扱いされるのは仕方がないと自覚するのは、この身体に否応なく老いを感じるからでもある。 その一つが聴力の低下である。…

徒然に(6) 糞考(その三、糞肥つづき)

前話に載せきれなかった『農民哀史』の一節をもう一つ二つ。 「父と小作料問題を話す。一反八畝三歩で収穫が七俵(約420㎏)。そのうち小作料が四俵と一斗一升(約260㎏、収穫の60%超)とは馬鹿な話だ」 「… 尋常四年の妹は、二歳になった実(みのる)を背負って…

徒然に(6) 糞考(その二、糞肥)

洋の東西を問わず、家畜糞が作物の栄養源になることは知られていた。ただし、小屋飼いなら糞尿を確保できるが、放し飼いの場合は容易ではない。放牧が主体の欧州では、放牧中の畜糞で肥やした後に作物栽培する三圃式の方法があった。 家畜糞が肥料になるなら…

徒然に(6) 糞考(その一、糞食)

20年ほど前に買っておきながら読まずにいた本が、“積読(つんどく)” の山の下から出てきた。読み始めたらなんともおもしろい。中公新書『ふしぎの博物誌』2003。編著者河合雅雄さんの冒頭の1編「究極のリサイクル---糞食」にまず食いついてしまった。 「糞は…

徒然に(5) 賢人に学ぶ(三)

もう一つのディストピアSFに、ジョージ・オーウエルの『1984年』(1949刊)がある。17歳の時に読んで、こんな恐ろしい世界はごめんだと強く思った。 高校2年、夏休みの英語の宿題で、オーウエルの『Animal Farm(動物農場)』(1945刊) 数十ページ分を「和訳せよ…

徒然に(5) 賢人に学ぶ(二)

切り口は異なるが、賢人に学ぶもう一つの方法。過去に著わされた「未来を描いたSF小説や漫画」などから、人類の叡智と愚かさの両面を学ぶ方法である。 例えば、アイザック・アシモフの『鋼鉄都市』(1954刊)。ロボット工学三原則に縛られたロボットに殺人が犯…

徒然に(5) 賢人に学ぶ(一)

壮年になってから、自分の発言、行動に正当性があるか、何か欠陥があるかもしれないと徐々に不安が募るようになった。「これが正義だ」と自分の主張を一方的に押し付ける増上慢に陥ってはいないかと、そいう煩悶だった。 はるか昔に父親に言われた言葉が蘇っ…

徒然に(4) 紙の本がいい(その二)

いまや小説も漫画も、スマホやパソコン画面で読めるそうだが、なんとも気に入らない。紙の本がいいに決まっている。俳優たちがテレビで「セリフは紙の台本でないと覚えられない」と口々に言っていた。そうだろうと思う。 まちの本屋が消えつつあるという。人…

徒然に(4) 紙の本がいい(その一)

もうだいぶ前からだが、妻からくり返し小言を言われている。寝室に散らかっている無数の本を “片付けてくれ”というのである。今秋こそは、と思う。 私の癖だが、面白いと思った本は何度も読み返してしまうので、カバーは外れ、表紙は反り返ってくたくたにな…

徒然に(3) 学び直し

遠く萩と周防に旧友3人を訪ねる旅に、武蔵野のY君と美濃のU君が同行してくれたのだが、二人とも “学び直し” に関わっている。 Y君は東京都の農業技術職を65歳で退職した後、受験勉強に精出して1年後に大学生になった。3年生の今年から卒論にとりかかっている…

徒然に(2) 友を訪ねて

“朋(とも)遠方より来る。また楽しからずや” と古典にある。この気分を十分に味わう旅をした。“友を誘い、古き友らを遠方に訪ねる。大いに楽しからずや”。萩と周防への旅だった。 48年前に常陸野の小さな農学校で出会い、寝食を共にし、兄弟姉妹以上の親密な…

徒然に(1) メタンガスの話

牛のゲップや水田面から放出されるメタンガスが温暖化の要因とされるが、田んぼや池からメタンが放出されるのは自然現象で、今に始まったことではない。私は少年のころから「燃える空気」の存在は知っていた。 昭和30年代の田舎の子供の遊びは、野や山、川や…