2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その五)

生物種の絶滅は、私たちのくらしにどのような影響があるのか。 直接的には生物資源、遺伝子資源の減少のことがあるが、もっと根本的な問題として「野生生物種の減少が進むことにより、密接に関わり合った様々な生物種の相互関係により成り立っている地球環境…

農と暮らしの技(1) 藁(わら)の話(その一)

「子どものころ藁の布団に寝ていた」と若い人に言ったら、その人は “藁くずの中に埋もれて寝ていた” のかと想像したみたいで、一緒に笑ってしまった。 乾草のような藁くずの山を想像したのも無理はないが、そうではない。“ちゃんと” 木綿の袋の中に稲藁クズ…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その四)

農林業の最も重い罪は、生物種の大量絶滅を促していることだ。すでに1980年代から警告が発せられ、生態学の研究者などが対策の必要性を発信していたが、日本の農業界は鈍感で問題認識はきわめて薄かった。 生物種の絶滅種数について、世界132カ国の政府が参…

徒然に(1) メタンガスの話

牛のゲップや水田面から放出されるメタンガスが温暖化の要因とされるが、田んぼや池からメタンが放出されるのは自然現象で、今に始まったことではない。私は少年のころから「燃える空気」の存在は知っていた。 昭和30年代の田舎の子供の遊びは、野や山、川や…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その三)

有機性廃棄物や牛のゲップ、水田からはメタンガス(CH4)が発生する。世界的には大気中のメタン量が増加している。メタンはCO2の25倍の温室効果があるが、廃棄物からの発生減少で日本のメタン発生量は減ってきている。農業からの発生量が横ばいであるため、牛…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その二)

気候危機と農業の関りについて考えてみよう。 まず何をおいても、私たち日本人が責任を感じなくてはならないことがある。大量の食料輸入に使われる化石燃料のことだ。食料輸入量✖輸送距離をフードマイレージといい、環境負荷の大きさを表す指標の一つである…

有機農家を育てる(6) 農家30万人に減る?

8月16日の朝日新聞に、希望をなえさせる記事があった。 タイトルは「農家の価格転嫁 制度検討」で、農家の肥料や燃料代のコスト上昇分を販売価格に適正に転嫁できるよう制度づくりの「検討を始める」というものだ。絶対に必要な対策だと思うが「ただ、農産物…

環境問題と農業(1) 農業は環境に何をしたのか(その一)

世界の農業のあり方が問われている。 「農業は環境にやさしい産業だ」などといわれた時代があったが、まるで嘘だった。残念ながら、これまでの農業は環境悪化を促す存在だったのだ。 農業が関わる主要な環境問題は4つある ①気候危機:温室効果ガス、経営上…

有機農家を育てる(5) 技術指導者が足りない

大学の農学系学部に有機農業に関連する講座や科目がいくつもあることは承知している。だが、現状の大学教育で農家が育つかどうかは疑問だ。有機農業に関わる大学教育は、土壌肥料や病害虫など技術系の狭い専門領域か、社会科学系の分野がほとんどだ。生産技…

【運命共同体社会】農漁村に原発は相容れない(その五)

ここ茨城の地は、日本最初の原発が稼働した場所である。日本原電による東海原子力発電所だ。東海第二原発は、2011年3月11日の地震と津波でその後53時間、外部電源を失ってあわや大事故の寸前だった。現場の綱渡りの対応で事故は免れたが、「福島のようになら…

有機農家を育てる(4) 有機農家30万人化をどうするのだ

日本の食料自給率はカロリーベースでたったの38%。食料の3分の2を輸入に頼っていて、世界196か国のうち最低ラインだ。気候危機、生物多様性の危機などから、世界中で喫緊の課題として食料問題に焦点が当たるようになった。生産性低下への懸念とともに、ウク…

有機農家を育てる(3) 研修農場を起ち上げる(その三)

NPOあしたを拓く有機農業塾は、専務者の私の事情と資金繰りの行き詰まりもあって、2022年9月をもって解散した。もっと続けたかったが、やむを得ない。研修農場は閉じることになったが「研修を受けたい」という希望者は途切れなかった。「別の形で研修できる…

有機農家を育てる(3) 研修農場を起ち上げる(その二)

57歳、そこそこの退職金を元手に始める農業。おそらく資金回収は無理だろうと思いつつそのことは妻にも言えない。12年後、結局貯金を使い果たして研修農場を閉じることになったが、成果には十分な満足感が残った。 NPO法人あしたを拓く有機農業塾(研修農場…

有機農家を育てる(3) 研修農場を起ち上げる(その一)

今から四半世紀も前の1999年のことである。鯉淵学園農業栄養専門学校の農業科に、新科目「有機農法論」を開講した。有機農業の技術を課題にした6カ月15回30時間の科目だったが、教材に困った。テキストにできる本がどこにもなかったのだ。 開講前から分かっ…

この国のかたち(3) 消費税はなんのために導入されたか

インボイス制度というものが始まろうとしている。この制度、財務省のねらいはマイナンバーカードのそれと根っこでつながっている。 この制度は、商品を仕入れる(あるいは業務を委託する)際に、仕入れ先(業務委託先)に「適格請求書」を発行させて仕入れ税額を…

この国のかたち(2) 健康保険証を廃止してはいけない

私は、マイナンバーカードを持っていない。必要ないと思っているし、むしろ持ちたくない。だから今後も申請しようと思わない。国にも大企業にも個人情報を一方的に利用されたくない。そう思う人はけっこう多いのではないか。 マイナンバー制度は、国民一人一…