有機農家を育てる(3) 研修農場を起ち上げる(その三)

 NPOあしたを拓く有機農業塾は、専務者の私の事情と資金繰りの行き詰まりもあって、2022年9月をもって解散した。もっと続けたかったが、やむを得ない。研修農場は閉じることになったが「研修を受けたい」という希望者は途切れなかった。「別の形で研修できる場を考えるから、待機していてください」と伝えて、希望を捨てさせないことにした。

 別の形は、数年前から構想していた。

 笠間市と、隣の城里町には、私のもとで学んで就農した有機農家のほかに既存の有機農家もいる。営農経験5年を超えて経験豊富な有機農家なら、協力し合えば研修生の指導ができるだろう。新たな「研修生受入れ団体」を作れば就農者育成を途切れさせずに続けることができる。

 7名の有機農家に新団体設立を呼びかけて賛同を得、原案を作って茨城県の担当課と管轄の普及センターに相談すると、「ぜひ作ってくれ、支援する」という。

 こうしてできたのが、「笠間・城里地域有機農業推進協議会(笠城有推協)」である。笠間市城里町の農政課に理解と協力を得て、茨城県に申請した。県知事認可の研修機関になったので、研修生は国の助成金を手にできる。2023年5月から2名の研修生を受け入れて活動を開始、私は事務局として参画している。

 笠城有推協:https://kasama-organicshop.wixsite.com/farmarstraining

 笠城有推協のように、農家の集団が研修生受け入れ団体として就農者を育てる事例は全国にある。各地にある有機農家集団は、生産物の販売ルートを共有する事業集団でもある。巣立った新農家は、この事業集団に加われば就農後も技術面の助言をタイムリーに得られるし、販売網にすぐ参加できる。先輩農家にとっても集団の機能強化になるから、人を育てる意義は大きい。

 だが、こうした農家集団の人材育成力には限界がある。年にせいぜい2~3人だし、そもそも人づくりができる集団の数が、期待されるほど多くはないからである。だから、新たな研修生受け入れ団体を作って、つくづくよかったと思う。

 先のNPO法人あしたを拓く有機農業塾は、主に畑作物(野菜、麦、大豆など)の栽培指導だった。私にはできないが、より切実な課題が、実は有機稲作の就農者育成のことである。当地でも耕作放棄され荒廃した水田が年々拡大している。若手の稲作専業農家は、人口7万余の笠間市に片手で数えるくらいしかいない。若手の稲作農家の切実な声は「仲間がほしい」である。

 “笠城有推協”には、優れた有機稲作者がいる。まずは有機稲作就農者を育てたい。それができる研修機関なのだ。有機稲作に興味がある人は、ぜひ相談してほしい。

有機栽培の田んぼ(笠間市岩間地区)