2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

有機農産物に付加価値はありません(2)

「有機野菜はおいしい」という消費者の声がある。それは、慣行栽培の野菜と比べて味が優れるという評価なのだが、その評価は科学的に説明できるのだろうか。 食品の質を科学する農学者らの研究結果は「差がある」、「明瞭な差はみられない」の2通りで、要は…

【運命共同体社会】農漁村に原発は相容れない(その四)

過去から今、未来へと移る時の流れ、血縁と地縁に連なった人々の絆、仕事とくらし。原発事故は農民からそのすべてを奪った。(その二)で、そう書いた。 すべてを奪われた人々は「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」と裁判に訴えた。原告4,000人の訴えは「…

有機農産物に付加価値はありません(1)

有機農業に関わるようになって、まもなく30年。 30年前は、農協や行政関係者から「有機」の単語はほとんど、いやまったく聞くことはなかった。30年後の今、県職員や農協の人が「付加価値のある有機農産物を」などと連呼するさまを見て、隔世を感じるとともに…

【運命共同体社会】農漁村に原発は相容れない(その三)

原発事故で失ったものの一つに、農の技術のことがある。 放射性物質は東北地方南部から関東各地の山林にも降り注いだ。林床の腐葉土表層が高濃度の放射性物質に汚染され、ここに育つ林木がこれを吸い上げてしまったため、林床の腐葉土とともに、2011年秋以降…

【運命共同体社会】農漁村に原発は相容れない(その二)

農民は、人生のうちの圧倒的長時間を屋外で過ごす。 野良仕事中、ふと一息作業の手を止めたとき、視界に入るすべてが農民にとってかけがえのないものになる。目にする景色のすべてが日々のくらしに伴走し、人生の色濃い時間として体に刻まれる。農地と里山、…

【運命共同体社会】農漁村に原発は相容れない(その一)

2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による大津波で、福島第一原子力発電所の爆発事故が起こった。広範囲で深刻な放射能汚染によって福島県民多数が避難を強いられ、ふるさとを失った。 そのわずかひと月前、私は34年勤務した鯉淵学園農業…

農民、農家、百姓(4) 百姓ジャパン

5月のある日、朝日新聞のコラム記事に「なぜ侍なんだ 百姓ジャパンでよくないか」があった。WBC「侍ジャパン」のことである。 「恥ずかしげもなく新聞も連呼している。なぜジャパン=侍なんだ?」と書いた記者は、「わたしは米を収穫し、冬は猟師、サトウキ…

この国のかたち(1) もうかる農業?

私は新聞を3紙購読している。日刊紙を2紙と、タブロイド判の週刊紙「農民」だ。日刊紙は、毎朝1~1時間半かけて2紙を読むのを日課にしている。 週刊紙「農民」は、農民運動全国連合会(農民連)の機関紙であるが、他紙が報じないリアルな農業実態を知ること…

農民、農家、百姓(3) 百姓は多機能な仕事人集団

菰(こも)編みを体験する 百姓(ひゃくしょう)は長く差別用語として扱われてきた。だからか、現代農民のほとんどは自らを百姓と呼ばないし、関係者も今やまったくこの言葉を使わない。農村ではほとんど死語になっている。 一方、近年になって農外から参入し…