2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

この国のかたち(13) 新農業基本法と戦時食糧法

政府が今国会で改定をめざす新農業基本法「食料・農業・農村基本法」には、食料自給率向上が明記されず、国策としては放棄される内容になっている。国民の食料確保を、政府の義務ではなく「農業者その他の関係者が取り組むべき課題」として農業者の責任に落…

農と暮らしの技(7) 橇 (そり) で運ぶ(その二)

春の雪消え直後は、農家はとても忙しい。待ってましたとばかりに田畑の作付け作業が一斉に始まるのだ。だから、少しでも早く雪を消す工夫が昔からあった。 田んぼに堆肥を落とし込む穴を掘るついでに、下の田土をすくって周囲に撒くことがあった。黒い色が太…

農と暮らしの技(7) 橇 (そり) で運ぶ(その一)

農は物を運ぶ仕事がとても多い。堆肥や肥料、さまざまな道具、そして収穫物。どれも重い物ばかりだ。今は軽トラックをはじめ、さまざまな運搬車があるが、昔はどうしていたのか。時には家畜に背負わせたり荷車を引かせたりしたが、人が背負い、後にはリヤカ…

農と暮らしの技(6) 工芸作物

25年ぶりに和室の畳表を取り替えた。新しい畳は青々としていい香りがする。若い職人さんが新しい畳表の生産者を教えてくれた。にこやかな壮年農家夫婦の写真と生産者情報が記されたカードを渡されて、今はこんなにていねいな対応をしてくれるのだと嬉しくも…

自然共生の農と食を未来人の手に(4) NPO農業のすすめ

有機農家を育てる研修農場をNPO法人として運営した経験は貴重だった。12年間で20余組の新農家を送り出すことができたのは、多くの人の参加と支援があったからだ。個人活動ではとても無理だった。新農家育成もさることながら、その過程で数千名に及ぶ人々がこ…

徒然に(8) 新聞を読む

新聞は紙であり印刷された活字であるが、単に日々の最新情報を提供してくれるだけの「物」ではない。国内のみならず世界各地の人々のくらしや生き様を知り、そうした人々の声が聴ける「開かれた窓」である。いい話もあればつらい記事もある。毎朝、人々の生…

自然共生の農と食を未来人の手に(3) 有機農家30万戸育成計画(その二、民間の農学校に有機指導者養成所を)

道府県農業大学校と教育目標を共有する民間の農学校が全国に5校ある。東京にあるのはAFJ日本農業経営大学校であるが、実習教育を行っていない。もう一つ岡山県にあるのは中国四国酪農大学校である。 他の3校は長野県と茨城県にある。それぞれ広大な実習農場…

自然共生の農と食を未来人の手に(3) 有機農家30万戸育成計画(その一、全国の農学校に有機コースを)

新農家100万戸育成 (120万戸育成に取り組んで定着100万戸)計画 のうち、30万戸は有機農家を想定する。120万戸育成活動の4分の1 (25%) にあたる。指導農家1万組合 (4~5万戸) を有機農家育成にあてたいところだが、現状では有機農家はそんなに存在しない。経…

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その八、技術コーディネーター)

これが新農家100万戸育成計画の概要。予算1兆円はとても大きな額だが、未来人のためには必要な投資だ。 4万の指導農家組合を組織することと同時進行で進めなければならないのが、全国津々浦々に支援組織を配置することだ。都道府県単位では網目が荒すぎてあ…

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その七、新規就農者の現状は)

実践力ある指導者の育成を次話で、と前話で締めくくったが、さらに次話に送る。その前に新規就農者数の現状を確認しておこう。 農水省の数字に依れば、2022年の「新規自営農業就農者」は31,400人である。しかし20年後も確実に営農を続けてくれると期待できる…

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その六、指導農家を支える地域連携)

指導農家1戸だけで新人農家を育てることは容易ではない。それを物心両面で支えられるものがあるとすれば、その第一は周囲の同志農家の存在だ。少なくても3戸、可能なら5戸くらいの研修生受入れ農家組合が望ましい。前話で4万戸の指導農家が必要だと書いた。…

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その五、1兆円以上の農家育成予算を)

国民を飢えさせないこと、栄養豊かで満足できる食事を保障することは国政のもっとも大事な責任であるはずだ。20~30年後に食料不足に陥るかもしれないと、農水省は花農家や畜産農家の畑に穀物やイモ類などを強制的に植え付けさせる法律を考え始めている。 次…

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その四、有徳人たちの力)

技術と経営を教えて就農に導く指導者のあり方にも、二つの例がある。一つは行政と連携し、国や都道府県の支援制度を使って手厚く就農者を育てる「認定研修機関」のあり方。もう一つは、制度に頼ることなく個人的に就農者を育てる例である。研修機関の認定を…

自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その三、研修5道)

農家が減るのは、高齢農家に家業後継者がなくて離農が増えるからだ。農家の後継ぎが他産業に就職すれば、農家はいずれ田畑を耕作できなくなる。周辺の若手農家や農業法人、集落営農組合などに農地を預けて耕作してもらうことになるのだが、預かる農家の経営…