自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その八、技術コーディネーター)

 

 

 これが新農家100万戸育成計画の概要。予算1兆円はとても大きな額だが、未来人のためには必要な投資だ。

 4万の指導農家組合を組織することと同時進行で進めなければならないのが、全国津々浦々に支援組織を配置することだ。都道府県単位では網目が荒すぎてあまり役立たないように思う。各県10カ所くらいの普及センター単位が望ましい。全国に500くらいの支援拠点がほしい。

 その支援組織の要が、指導農家が研修生に伝える適正技術をコーディネートできる技術指導者、技術コーディネーターの存在だと考える。20~30年先を予見して、これからの新農家にどのような技術を伝授すればよいか。新農家自身に新たな技術展開を期待するには、技術指導のあり方をどのように考えればいいのかを、時宜適切に助言できる指導者が必要なのだ。

 予測される未来は営農にとってそうそう楽観できるものではない。環境の悪化と対峙しながら進めなければならないのだ。手ごわい自然をなだめながら進めるべき農の技術とはどのようなものか。指導者には、そこを要点にして農家の求めに応じられる力量が必要になる。

 技術指導者、コーディネーターとして農家の期待に応えられるかどうか。そのポイントは、指導者自らが「栽培できる」「飼育できる」実践力を持っているかどうかだ。頭だけ、言葉だけの指導者の言には農家は従わない。「必要な情報」を得、「必要な制度的支援」を得るための窓口としてしかアクセスしない。そういう存在は指導者とは言い難い。

 新農家100万戸育成を実現させ得る指導者を、新たに育てなくてはならない。方法はある。指導者候補を1~2年間、農家に派遣して研修させるのだ。新人農家育成と同じプロセスで実践力を付けてもらうことが肝腎だ。その経験なしには、未来の農家育成の真の力にはなれないだろう。自ら農産物生産の経験を経た者でなければ、指導農家の期待には応えられないだろう。

 この「生産実技を持った指導者」こそが現場の期待をあつめられること、「指導者になるためには農家研修が必要」であることを、ずっとその道を歩んできた私は胸を張って主張できる。

 現状の農の世界には、残念ながら実践力ある普及指導員、営農指導員がきわめて少ない。この現状が日本の農を衰退させた要因の一つだと思う。未来人の食を確保するためにとても大事な改革ポイントなのだ。