自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その六、指導農家を支える地域連携)

 指導農家1戸だけで新人農家を育てることは容易ではない。それを物心両面で支えられるものがあるとすれば、その第一は周囲の同志農家の存在だ。少なくても3戸、可能なら5戸くらいの研修生受入れ農家組合が望ましい。前話で4万戸の指導農家が必要だと書いた。仮に5戸単位の指導農家組合を想定して、全国で20万戸の農家が新人農家育成に関わるしくみがほしい。研修生一人当たり100万円の予算は、したがって指導農家組合に支給することになる

 現在の認定研修機関は、研修生を受入れようとする団体や農家集団による「申請」方式だ。認定する行政側は、現場の自主的行動を「待つ」姿勢であり、行政として主体的に農家育成の行動を起こさない。いわば農家側の奉仕活動に「認可を与える」制度設計になっている。こんなしくみでは農家育成は先細るだけである。農村現場が衰退の一途なのだから。

 提案したい農家育成計画は、向きを逆にして、行政側から農村現場に「指導農家組合を作ってください。必要な支援を整えますから」と要請するしくみにしなくてはならない。指導農家集団に「未来人のくらしを保障するために、後進農家を育てる活動にどうか協力してください」とお願いする政策化だ。

 指導農家組合を全国各地に4万組整えるのは、相当に大掛かりな作業になるだろう。農家の理解と協力を得るための説得と支援のありかたに、多大な議論を必要とするだろうが、これまでの行政側の待ちの姿勢から、「農の再生のために必要だから」という積極的な姿勢に転換すれば、きっと現場は応えてくれるにちがいない。衰退を最も悲しんでいるのは農家自身だからだ。

 さて、これまで自家の農家経営だけに専念してきた人たちに、農業初心者にあれこれ教えてやってくださいと要請したら、きっと戸惑うだろう。意欲だけでは研修生のお世話はできない。研修生に教える、新人農家を育てることの意義や方法を学び、研修生対応の不安を解消してもらわなくてはいけない。必要なのは、指導の専門家が農家集団にピタリと寄り添うことだ。

 農家集団を支える機能として、生産技術、教育方法、経営マネージメント、カウンセリングなどの専門家チームを整えなくてはならない。都道府県の農業改良普及指導員と研究員、農協の営農指導部門、大学や農業大学校教員などを総動員した「指導農家支援組織」を、全都道府県に整備する必要がある。

 指導支援力の整備費3,400 (~5,000) 億円は、指導農家組合のシステム化、指導農家支援組織の整備とその運営費に充てられることになるが、そこにもう一つ課題がある。実践力ある指導者の育成課題だ。それは次話で。