自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その二、20年後)

 わが国の農家数減少の経過をあらためて、確認してみよう。

 農林業センサス (農林水産省) によると、1950年に1,350万人だったものが、1975年490万人、2000年240万人、そして2022年は123万人に減ってしまった。1950年比で91%減である。ちなみに食料自給率は1960年に79%だったものが2022年は38%と半減した。

 農家数を統計では人数で表しているが、実態は農家戸数の減少である。農家が離農して、農水省のいう「基幹的農業従事者」から離脱したことを表している。農水省は、2040年代には基幹的農業従事者が30万人 (戸) にまで減ると予測している。減少率を単純に食料自給率に当てはめれば、自給率9.5%となる。まさかそこまで自給率が下がるとは思えないし想像したくないが、劇的な対策を取らなければ国民は20年後、国産食料をほとんど食べられなくなる。外国から買えるかというと、それは相当困難になるだろう。飢えが待っているかもしれない。

農林水産省HPから抜粋

 農家減少を座視してはいられない。最低限の措置として、現状の農家数を維持する対策に取り組まなくてはいけない。20年後30万戸に減るとすれば、新たに100万戸の新規就農が必要になる。合わせて130万戸だが、これでは食料自給率の向上までは望めない。国産食料を今以上に増産し供給するためには、さらなる農家数の増加が必要なのだ。期すべきは200万戸、300万戸の農家育成であり、それは2050年、2060年を見すえた長期計画となるだろう。

 私は2011年に元職の農業専門学校を退職し、就農者育成の研修農場を開業した。自ら農民となり、実践的な研修農場をNPO運営として研修生を受け入れ、その成果として12年間に20名の就農者を育てた。我ながらよくぞ20名を送り出せたと思う。多くの支援者に恵まれたからできたことだが、冷静に客観的にその成果を振り返れば「たった20名」でしかない。12年を20年に換算しても、育成農家数はわずか33戸である。

 個人農家が後進を育てる力はこの程度なのだ。それが農家育成の実態であり、限界である。ことほど左様に自営農家を育成する仕事は、実に容易なことではない。今後20年で新たに100万戸の農家を育成しようとすると、私のような活動ができる指導者が30,000人必要になる。現状からすると、残念ながらまったく非現実的である。自覚的に後進を育てようとする農家、指導力、体力のある農家は減少の一途である。後進育成の環境は厳しさを増すばかりなのだから、100万戸農家育成には、国の姿勢を大転換させるほどの計画が必要である。

 その計画を実現するためには何が必要か、何を変えなければならないか。