自然共生の農と食を未来人の手に(2) 新・農家100万戸育成計画(その五、1兆円以上の農家育成予算を)

 国民を飢えさせないこと、栄養豊かで満足できる食事を保障することは国政のもっとも大事な責任であるはずだ。20~30年後に食料不足に陥るかもしれないと、農水省は花農家や畜産農家の畑に穀物やイモ類などを強制的に植え付けさせる法律を考え始めている。

 次の図は農水省が作ったものだ。食料輸入、家畜飼料輸入が滞った場合を想定し、イモ類中心の食生活を例示した。

農水省:食料自給力指標(いも類中心の作付け)の食事メニュー例

 こんなくらしを国民に強いる農政でよいのか。こんな想定をする前にやることがあるはずだ。

 新・農家100万戸育成計画を具体化しよう。

 20年間で100万戸育成といっても就農者が若い人だけとは限らない。50代60代の人が新規就農する例も想定しなければならない。そうすると20年経つうちにはリタイヤする農家もあるだろう。そういう予測も入れて120万戸育成を目標にしよう。

 120万戸/20年は、年6万戸育成になる。研修生を受け入れて指導する農家1戸あたり年に1.5人育成を目標とすると、指導農家が4万戸必要になる。経験からすると個人農家に1.5人育成目標はかなりきつい。個人の努力だけでは不可能である。農家集団の相互協力が大前提であり、行政の支えが必須である。

 研修生受入れは、農作業の助けになる面がないとは言わないが、実際は負担の方がずっと大きい。とても「めんどう」なのだ。気持ちの負荷が大きくて、よほど公共心というか奉仕の心、強靭な意志を持たないとできない。研修生を指導し就農までのお世話を確実にするためには、公共の支えが前提だ。まずは指導農家への所得補償と、加えて厚い指導手当が必要である。

 指導農家への手当として、研修生一人当たり100万円の予算化が第一歩になる。年6万人で600億円を準備する。農家が研修生を引き受けようかと考える「動機づけ」としては最低ラインである。もっと大きな額が必要かもしれない。

 就農への意欲醸成をねらい、研修生には就農準備資金 (現行150万円/年) を200万円に増額して支給しよう。5年間(研修中2年、営農開始後3年)支給 (6万人×5) で年6,000億円になる。指導農家と研修生(就農者)への投資は合わせて6,600億円となる。

 農家と研修生に金を出すだけでは農家育成はできない。次の課題は行政、農学校、農家の連携システム構築、指導支援力の整備だ。この課題に3,400億円 (~5,000億円) を投入しよう。国民を飢えさせないための経費「第一歩」だ。