有機農家を育てる(4) 有機農家30万人化をどうするのだ

 日本の食料自給率はカロリーベースでたったの38%。食料の3分の2を輸入に頼っていて、世界196か国のうち最低ラインだ。気候危機、生物多様性の危機などから、世界中で喫緊の課題として食料問題に焦点が当たるようになった。生産性低下への懸念とともに、ウクライナ戦争の影響もあって今後の食料貿易に暗雲が立ち込めている。この先、日本が安定的に食料を確保できる見通しは立たなくなった。

 日本の低自給率は、農家の劇的な減少が背景にある。

「農林業センサス(農林水産省)」によると、農業従事者数の推移は、

★1950年 1,350万人、1975年 490万人、2000年 240万人、2020年 136万人

 過去70年で、10分の1に減ってしまった。現状は全就業人口のわずか2%。壊滅的である。

 農家を減らしたのは農政そのものだ。その農政(食料政策)は、工業製品輸出に重きをおいた国の経済政策の裏返しであり、その結末が現在以降の「食料危機」につながっている。大企業財界のもうけ優先で、適正な社会のありようと国民のくらしを後回しにした戦後政治のつけが国民の食、いのちを脅かしている。

 2021年5月、農林水産省は「みどりの食料システム戦略(食料・農林水産物の生産力向上と持続性の両立)」を公表し、世間を驚かせた。農林水産業のCO2ゼロエミッション化などとともに、有機農業のシェアを2050年に25%(100万ha)にしようとするプランだったからだ。翌年に法制化されたこの課題は、有機農業関係者には歓迎と懸念の両方で論議の的となった。

 有機農業の拡大は世界の趨勢であり、当然の流れである。EUは2030年目標がシェア25%であり、日本の20年先を行っている。すでに10%を超えている国が多数ある中、日本はわずか0.6%である。

 私の見立てでは、2050年25%化は困難だろう。100万haに見合った有機農家の確保ができないと思う。現状の有機農業面積は25,000ha、有機農家1.5万人。平均耕作面積2ha未満である。100万haにするには面積で40倍化が必要で、戸別耕作面積を5haに拡大したとしても20万人、3haなら30万人の有機農家が求められる。

                    (農林水産省資料 2021)

 どうやったら有機農家が育つか。農村はすでに体力が失せた。人を育てる力はほとんど残っていない。有機農業を教えられる農学校は全国に数校のみ。教えられる教員、指導者がごくわずかしかいない日本の現状を、危機といわずになんと言うか。