【運命共同体社会】農漁村に原発は相容れない(その五)

 ここ茨城の地は、日本最初の原発が稼働した場所である。日本原電による東海原子力発電所だ。東海第二原発は、2011年3月11日の地震津波でその後53時間、外部電源を失ってあわや大事故の寸前だった。現場の綱渡りの対応で事故は免れたが、「福島のようにならなかったのは運が良かっただけだ」と、当時東海村長だった村上達也さんはいう(東京新聞、2021.3.8)。

 12年後の今、東海第二原発では再稼働の準備が着々と進められている。これに対し、原発に反対する市民は大きな2つの行動を起こしている。

 一つは裁判闘争。2012年に地元住民224人が水戸地裁に「東海第二原発運転差止め」を求めて提訴した。2021年3月18日、水戸地裁は「実現可能な避難計画及びこれを実行しうる体制が整っておらず、今後の達成も困難と考えられ、緊急事態の際に30km圏内の住民が短時間で避難することは困難」であることから、「東海第二発電所の原子炉は運転してはならない」の判決を下した。原告勝訴だったが、被告の日本原電が控訴して審理は東京高裁に移った。

東海第二原発30キロ圏内に住む人は93万人

 もう一つは、東海第二原発再稼働の賛否を問う「県民投票」を求める運動である。2020年、市民団体「いばらき原発県民投票の会」が県民投票条例制定を求める直接請求を大井川知事宛に提出したが、県議会で条例案は否決された。「県民投票の会」は、県民投票条例制定をめざして2024年に再チャレンジする。微力だが私も署名集めに参加する。

 原発再稼働の是非についてはこれまで「国民の過半数は再稼働に懐疑的であり、反原発脱原発の世論は根強」かったが、2022年以降は賛否が逆転しつつある。ウクライナ情勢、石油価格、電気代高騰などが影響したか。悩ましい状況だ。

 

 (その一)で「日本政府はなぜ“原子力利用はやめよう”と言わないのか」と書いた。理由はマイナカード問題、消費税・インボイス制度導入の背景と同じである。原発は関連する大手企業にとって金の生る木だ。大企業財界の大番頭を務める政治のあり方を改めないかぎり、原発推進の姿勢は変わらないだろう。

 国を挙げて再生可能エネルギーへの大転換を急ぐべきである。太陽光、風力、小水力、地熱、有機性廃棄物(メタンガス)などは、それぞれ立地条件に合わせて全国津々浦々で利用できる。小規模分散型で、地方の経済振興、雇用の確保など、そのメリットは大きいのだ。今夏の猛暑は地球滅亡を思わせる。日本はもう、化石賞を再々受賞するような国であってはならない。

 最大最悪の地域社会分断と環境破壊を引き起こした原発はやめようではないか。それができるか否か、私たち国民一人ひとりの意識が問われている。