この国のかたち(15) 国民の食料をどうするのだ

 今日の記述は少々長くなる。私の危機感の表れだ。

 食料・農業・農村基本法の改定案が3月26日、衆議院で審議入りした。この改定案は、わが国の未来を危うくしかねない危険な内容である。この法案どおりなら、国産食料の確保を完全に放棄するに等しい。座視してはいられない。

 26,27日の日刊紙赤旗が、日本共産党の紙智子、田村貴昭両議員の核心を突く質問と岸田首相の無責任な答弁を詳しく報じている。以下は赤旗記事から抜粋して要点を整理してみたい。

▶ 26日紙面、「紙氏は、日本の食料自給率が38%で、この20年間で専業農家が約100万人、耕地面積が約50万ヘクタール減少したと指摘。農林水産省が2040年の専業農家は30万人になると推定し、三菱総研は50年の米の生産量は最悪291万トンに半減すると推定しているとし、『日本でも食料危機が現実味を帯びている』と迫りました。岸田文雄首相は『弱体化は危惧されているので、農地の集積などにより生産性の向上を図る』などと答え」たとある。

 「紙氏は、日本農業法人協会会長の『若い人が何で定着しないかといえば、農業で食えなくなっているから』との声を紹介。稲作経営の時間あたりの農業所得が15年592円、20年181円、21年と22年は10円に下がっている状況を示し、なぜ下がったのかと追及」している。「首相は労働者の賃上げが必要だと言うが、農家の手取りはどう上げるのか」「生産者へまともな支援がない」「21年の各国の農業関係予算に占める直接支払い(助成金)の割合が日本は28%と最も低い」「1980年には、農林水産予算が軍事費を上回っていましたが、その後逆転、2023年には軍事費が当時の3倍に」「食料の安全保障が焦点になっているとき、日本の農林水産予算を抜本的に増やすことこそ、政府が果たすべき責任ではないか」と紙氏は追求したが、これは国民のいのちに関わる問題。これほど真っ当な要求に背を向け続ける自公政権に道理はない。

▶ 27日紙面、「田村貴昭議員は質疑で、自民党政権が米国の余剰農産物を受け入れ輸入自由化を進め食料自給率を1965年の78%から38%に落ち込ませた自民党農政の責任を厳しく批判。……『安全でおいしい食料を日本の大地から』『これは農家だけではなく、国民の願いだ。そのためには、農家が農業で暮らしていける収入がなくてはならない』と強調。2022年の畑作経営の平均年収が補助金を入れても223万円、稲作経営の平均年収が1万円、酪農は年間49万円の赤字だと指摘し『この事態の抜本的な改善なくして農業と農村の再生はない』と、価格保障や所得補償を抜本的に充実し、政府の責任で基本法に明記すべきだと主張。『経営形態を問わず農村で暮らせる所得を国が保障することが必要だ』」

 「改定案と同時に、提出された『食料供給困難事態対策法案』は有事の際に農家に芋などを作ることを罰則で義務付ける異常なものだ。1941年(戦時中)につくられた国家総動員法に基づく農地作付統制令・臨時農地等管理令にうり二つだ、と指摘し、撤回を求めました」

 食料・農業・農村基本法改定案の是非について、赤旗はしばらく前から連日のように取り上げ、農家や学者らの見解も紹介し続けている。一方、朝日新聞は26日、27日付とも、この話題にまったく触れない。商業紙読者の圧倒的多数が非農家だからだろうか。あるいは朝日の社論として国民の食料に関する話題に重きを置いていないのか、そこはよく分らない。だが、食料が「いのちとくらし」を支える土台である点において、赤旗の姿勢に私は強く共感する。

 赤旗は1928年2月1日創刊で、96周年を迎えた。2月1日はくしくも私の誕生日、奇縁を想う。戦前から反戦平和を訴え続け、常に国民目線で考え、弱者、少数者の立場に立った報道に徹している。40年以上も購読しているが、その報道姿勢は変わらず一貫していて、私にとって貴重な道しるべの一つである。

 朝日新聞は27日、兵器の話題を1面で取り上げている。英国、イタリアと共同開発する戦闘機の輸出解禁(26日閣議決定)を取り上げ、昨年来の殺傷兵器輸出解禁に続いて安保政策の大転換だと1面で大きく記事にした。赤旗も「死の商人国家」へ重大転換、と政府の憲法蹂躙を厳しく糾弾する記事を1面に載せている。この話題もおろそかにできない。別途、取り上げることにする。