この国のかたち(2) 健康保険証を廃止してはいけない

 私は、マイナンバーカードを持っていない。必要ないと思っているし、むしろ持ちたくない。だから今後も申請しようと思わない。国にも大企業にも個人情報を一方的に利用されたくない。そう思う人はけっこう多いのではないか。

 マイナンバー制度は、国民一人一人に番号を割り振り、税や健康保険、資産などの情報を国が一元的に管理しようとする共通番号制度である。国民にとって「便利になりますよ」というが、それは口実で、本旨は政府と、その背後にいる財界の都合で作られたものだ。

 マイナンバーカードは、マイナンバー制度の総仕上げとして、国民一人一人の各種情報を1枚のカードにひも付けしてデジタル管理しようとする。

 財界のねらいは次の2つだろう。①収集された信頼性の高い個人情報をビッグデータとして活用すること、②社会保障のためと称して国民の負担増を政府に求める根拠とすること。企業の税負担を軽くしたいためである。何が何でも健康保険証と一体化したいのはそのためであり、最大のねらいなのだ。

 私は、こうした政府と一体化した財界の思惑に載せられたくない。マイナ保険証はやめろ、従来通りの健康保険証を残せ!と訴えたい。

 龍谷大学法学部教授の本多滝夫さんは「政府は『誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化』といいますが、実態は“誰一人取り残さず、国民にはデータを提供してもらう。マイナンバーカードによる証明のある個人データを提供しないものにはサービスを提供しなくてもいい”という排除の論理です」と言い切る。

 

 個人情報は国民一人一人の、個人の所有物である。どう使うか、あるいはどう “使われたくないか” は個人の権利に属する。権利者である国民には「私の情報を勝手に使わないでくれ」という権利があるのだが、マイナンバー制度、マイナンバーカードのシステムではその確認手段がない。情報を利用する側から「使っていいですか」と聞かれることなく勝手に使われ、企業の利益になるのは納得がいかない。腹立たしい。

 ビッグデータを使って得られる企業の利益には、新たな課税があっていい。あるいはデータ提供に見合う国民負担の軽減措置があってしかるべきだろう。とこういうと「ではカードを持たない人には軽減措置、サービスは必要ありませんね」と、新たな分断を持ち込まれるおそれがある。実にけしからん。

 「個人の生き方の多様性を否定することにもなりかねず、間違っています」と先の本多さんも言っている。

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