世界の農業のあり方が問われている。
「農業は環境にやさしい産業だ」などといわれた時代があったが、まるで嘘だった。残念ながら、これまでの農業は環境悪化を促す存在だったのだ。
農業が関わる主要な環境問題は4つある
①気候危機:温室効果ガス、経営上のエネルギー収支、食料輸入
②生物多様性の損失:生物種の大量絶滅
③窒素とリンの環境汚染:人為的投入量、陸域から水圏へ
④農耕地土壌の劣化:耕すことの是非、肥料とは何か、③と関わる
プラネタリー・バウンダリー(地球の限界値)という指標がある。2009年、ヨハン・ロックストロームら約20名の地球システムと環境科学者のグループが提唱し、その後の環境問題を考える上で世界的な視座になった。
9項目の課題に分け、うち7項目で限界値を定めているが、すでに閾値(しきい値)を超えた項目が4つある。最も深刻なのが生物多様性だ。
① 気候変動:大気中のCO2濃度。限界値は350ppmだがすでに400ppmを超え、破滅的な転換を起こしうる450ppmに向かっている。
② 生物多様性の損失:生物種の絶滅率が指標。自然状態の1000倍以上の速さで絶滅が進んでいる。生態系の破壊で今後約100万種の動植物が絶滅の危機にあり、人類による第6次大量絶滅になるともいわれる。
③ 窒素とリンの循環:窒素は人為的に陸から海に流化された量で、限界値は年4400万トンだが現状は15000万トン。限界値内に戻すことは困難になった。リンは限界値1100万トンに対して現状2200万トン。
④ 土地利用の変化:森林被覆率75%が地球の回復力に必要な数値だが、熱帯雨林、温帯林、北方林の大量伐採で60%になってしまった。
4項目とも日本の農林業、食料確保のあり方が深く関わっている。ヨハン・ロックストローム「温室効果ガスを大量排出して生態系も壊している食料生産システムの変革が、特に重要です(朝日新聞、2019.11.28)」の言を、私たち日本人は強く噛みしめる必要がある。
(その二)以降でその関りについてじっくりと考察してみたい。