有機農業とその技術(2) 有機農法の要点

 求めるべき今後の農のあり方、より適切な有機農業の姿を明らかにするために、まずは有機農業の目的にかなう技術、農法の要点を整理してみたい。有機農業の技術の基本は次の5項目に集約できる。この5項目と先に示した農法5類型の特徴を交差させて一つひとつ確認してみようと思う。

 

有機農業技術の要点>

  • 土づくり      :「肥料で育てる」から「土が育てる」へ
  • 生物多様性の農地管理:地下、地上の多様な生物と共生する
  • 適地適作、適期栽培 :無理をしない、自然環境と調和する
  • 耕畜連携、資源循環 :身近な資源の活用、資源自給の技術
  • 促成を排す     :あせらず、じっくり、ゆっくり育てる

<作物栽培は、具体的にはどのようにするのか>

・堆肥、発酵有機質肥料(ボカシ肥料)、緑肥作物などで土づくりする。豊かな土が良質な農産物を育てる、を知る

・さまざまな作物種、緑肥作物などで輪作、間作、草生栽培などを行う。天敵生物誘導のための「額縁植物」「バンカープランツ」など多様な技術がある

畜産農家、作物栽培農家の間で有用資源の相互活用を行う。作物栽培しながら少数頭羽の家畜を飼って経営内資源循環する「有畜複合農業」もある。野草や落ち葉、生ゴミ、米ぬかなど身近な有機物資源で堆肥やボカシ肥料を自家調製するなど、資源自給の技術を持つ

・旬の生産と供給を基本とする。それぞれの作物種に適切な時季、適切な生育期間がある。オフシーズンの施設栽培は有機農産物の特長を発揮できないことがある。生産農家も消費者もこれを知ってほしい

 次回から順次、項目ごとに技術をより詳細に紹介しよう。

 日本の有機農法は、戦後70年余、多くの有機農家の試行錯誤とその苦労によって積み上げられてきた貴重な技術資産である。後進の育成に資することを目的に、私はテキスト『解説 日本の有機農法、土作りから病害虫回避、有畜複合農業まで』2008、筑波書房(舘野廣幸と共著)を著わした。だが刊行からすでに15年余、一部内容は古びてしまった。最新の情報にもとづいた新たなテキストが求められる。以前から有機農業学会に新テキストの刊行を要請しているのだが……