有機農業とその技術(3) 土づくり(その一)

 土とは何か、土はそもそもどのようにしてできたものか、その成り立ちを知ることから始めなくてはならない。

 生物のいる星、地球には土があるが、生物のいない月には土がない。アポロ11号のアームストロング船長が月に最初の第1歩を下ろした時、舞い上がったのは土ではない。

 「岩石が空気中で常に適当な湿りの中に置かれ、適当な太陽エネルギー(日光)を受けていると、最初にコケの仲間が侵入してくる。ついでそれが次第に増殖するにつれ、岩石の表面は少しずつ土になり、そしてやがて順次、高等植物がその上に育つようになる」「土は絶えず生成し、再生されていく過程を繰り返す」(『図解土壌の基礎知識』前田正男/松尾嘉郎、農文協)。

 すなわち土は、長いながい年月を経て生物(植物、動物、微生物)が作ってきたものなのだ。作られては変性し、壊れ消耗し、また作られて積み重ねられて今の土がある。今この瞬間も新たな土ができ、厚みを増した土が地上の植物を支え育て、その植物を求めてさまざまな動物が生き死にと繁殖を繰り返している。私たち人間は、その「土の恩恵」によって食物を授かってきたのだ。

 

土の構成物は、次の3つである。

  • 岩石片、細かい砂、粘土鉱物など
  • 生き物(バクテリア、原虫、藻類、カビ類、センチュウ、ダニ、ミミズ、ネズミやモグラ等)
  • 有機物(生物遺体、動物排泄物、腐植)、すなわち枯れ木や落ち葉、枯れ草、虫の死骸、動物糞、根の老廃物などと、それらが分解されてできたもの

 この3つの構成物が混ざり合って土になる。生き物を排除すると土中有機物の分解が進んで消耗し、土の厚みが失われ、植物の生育条件を損なっていく。生き物の増殖を促すとその遺体や老廃物が土の生成を促して、土は増え豊かになっていく。土の豊かさは、だから、地上と地中の生き物の豊かさに依拠するのだ。

 豊かな土が健康な作物を育てる最大の条件である。作物栽培のために、豊かな土を育てることが「土づくり」なのだ。

 作物栽培は、そもそも耕す行為で土に負荷をかけ、あるいは壊してきた。その負の影響を少しでも小さくすること、できればより積極的に豊かな土を取り戻すことが、なにより求められている。