有機農業とその技術(3) 土づくり(その六、ミミズ)

 地球の表面に薄く存在する土壌は、実はとても繊細な構造物だといわれる。恒常的に動植物と微生物のはたらきによって生成と損耗を繰り返している。その生成に最も大きなはたらきをしているのがミミズである。ミミズがいなくなると、土は土としての性質を失っていく。世界中で進行している農地土壌の劣化は、ミミズの生存を脅かした結果といってもいい。

 ミミズ(アースワーム)の和名は「目見えず」から転じた名だという。目がない動物なのだ。大きさは様々で、1mm以下のものから、オーストラリアでは4m近い長さの種類もいるそうだ。日本にも長さ60cmのものや太さ1cmのミミズもいるというが、見たくはない大きさだ。

 ミミズには、一生を土中に棲む種類と、時に地上に出て生草を食べたりする種類がいる。前者は土を食べ、含まれる有機物や微生物を栄養源とし土中に糞をする。湿った堆肥中に多く見られるやや小型のミミズがその例だ。中南米では、能力の高い系統を使って「ミミズ堆肥」を作る技術がある。

 後者は地上に尻を突き出して糞をして粒状の糞塊を残す (写真参照)。草刈り作業中に草の株元まわりを観察すると、1~5mmくらいの土粒で覆われているのが分かる。すべてミミズの糞によるものだ。

地表にできたミミズ糞塊 → 表土の団粒化に

 土中でも表土でも、ミミズ糞によって日々栄養豊富な土に再生される。10aの農地におおよそ5~10万匹が棲息し、年間10トンの土を耕し、5トンの糞土を出すという。5トンの糞土は地表に広げると5mmの厚さになる。ミミズ糞には植物が吸える窒素が3倍に、リン酸が2.5倍に、Ca、K、Mgなどは2倍になる。

 ミミズは土を食べる過程で有害センチュウを減らすはたらきがある。また、ミミズ糞には放線菌が増殖し、産生する抗生物質によって植物病原菌を減らす効果もある。そしてミミズは、植物の生育を支える団粒構造の形成に直接的なはたらきをしてくれる。まさにアースワーム、地球の大地になくてはならない生きものである。

 畑土壌中でミミズに大いにはたらいてもらうには、できるだけ機械耕耘の回数を減らす(不耕起栽培への移行が最終目標)、そして表土を裸にしないことが要点だ。うね間を草で覆う「草生栽培」が効果的で、ムギ類や匍匐性マメ類のカバークロップを使う。冬場なら背丈が伸びない冬草を活かす手もある。刈り草や稲ワラによる有機物マルチもミミズは喜ぶ。直射光を遮り、表土に草の根が張り、土を乾かさないことがミミズには好都合なのだ。

 ミミズを知ること、ミミズを守ってミミズの力を借りること。地球の大地に生きる人間の責務の一つだと思う。