有機農業とその技術(4) 技術の自給(その二)

 今回の話題は有機農業のことではないが、その思想に通ずるものがあるので取り上げてみたい。新聞「農民」(11/13) に「マイペース酪農が日韓環境省を受賞」の記事があった。日韓国際環境賞は、毎日新聞朝鮮日報社主催の賞。

 うかつながら、マイペース酪農というものを知らなかった。ルーラル電子図書館によると「放牧を基本とし、化学肥料や濃厚飼料などの外部資源の投入を最小限に抑え、土、草、牛の関係・循環を良好に整えることを重視する酪農。北海道中標津町の酪農家・三友盛行さんが提唱し、…… 規模拡大、濃厚飼料多給による高泌乳路線への反省に基づく、永続的な酪農を追求」とある。

 提唱者の三友さんは言う。

  「経済第一主義の風潮が強まり、農業も経済産業の一員とみなし、農業を工業の論理で考えるようになった…… 化石エネルギーなどの地下資源と森林を略奪して進めてきた…… それは私たちの子や孫の代に消費すべきものを先取りしていることなのです。農業とは循環です。…… 農業が適地・適産・適量を守れば、持続が保障されます。もし農業が持続できなくなるとすれば、それは農民の不幸であるばかりか都市生活者の苦しみにもなるのです」

 これまでの、輸入穀物を主にした高栄養濃厚飼料によって高泌乳量を求める多頭飼育酪農が行き詰まっている。乳価の低迷に対し、燃油、飼料、化学肥料などが軒並み高騰してコストだけが膨らみ、酪農経営の危機とまで言われている。高齢化と後継者不足もあり、日本の酪農は縮む一方である。背景には、農業一般と同じ公費投入の少なさがあると同時に、技術購入システムに毒された「工業的」経営手法の一般化にある。

 30年以上の歴史があるマイペース酪農は、北海道東部を中心に実践者が増えているという。餌の70%を自前の草でまかない、草が主体の餌によって牛糞は繊維たっぷりの堆肥になり、草地の土が再生されてよい草が生える。「あそこの牧場では、境界の柵はほとんど不要。牛がよその草を食べようとしないんだよ」など。

 牧草地1haに牛1頭、45頭程度の適正規模を維持し、人にも牛にも草地にもやさしく無理をしないマイペース酪農は低投入持続的農業の酪農版。有機農業ひいては大地再生農業の思想を共有していると理解した。

 ちなみに実践地のひとつ別海町泉川集落は、満蒙開拓義勇軍参加者らの戦後集団入植地だったとのこと。苦労を重ねた酪農民たちの「幸せを求める実践活動」の結晶でもある。

 以上は、新聞「農民」とウエブマガジン「カムイミンタラ」1996.9月号を参考にし、一部を引用した。