この国のかたち(12) 新聞紙面から

 朝日6日朝刊から、いくつかを拾ってコメントしてみたい。

能登地震の死者が94人になった。負傷者464人、行方不明者1人、連絡の取れない安否不明者222人。安否不明者については、氏名を公表すれば所在が分かる例が多いとあり、連絡を取れないことが不安を増す要因であるようだ。孤立集落が多数あり、停電と通信障害が安否確認を妨げている。

 報道で目を引いたのが「住民基本台帳のデジタル化で、ネットワークや電力が遮断されると使えなくなるという弊害もある。今回の地震を教訓に、ほかの自治体も紙で台帳を保管するなどの対策を」(新潟大学鈴木正朝教授) の指摘である。過度のデジタル化は大きなリスクになる。長い歴史に鍛えられてきた知恵と文化を大事にして安易に切り捨てないことだ。

 マイナ保険証もこうした大災害時には無力だろう。紙の保険証を残すべき理由がここにもある。

▶ 『安保の行方、武器輸出を問う』で、「殺傷能力のある武器輸出の解禁によって、日本製の武器で他国の人々が殺傷される時代が現実になりかねない。それは日本が平和国家として、侵略戦争の反省を踏まえ、加害者にならないとしてきた国の形を変える大転換だ」(市民団体『武器取引反対ネットワーク』代表 杉原浩司氏) 「日本は憲法前文で、世界の人々の平和的生存権を守ると宣言し、9条で武力による紛争解決を否定している。世界のどこで侵略や虐殺が起きても、できる限りの支援を行うべきだが、日本は『良心的軍事拒否国家』として、非軍事的な支援に徹すべきだ」。そのとおり! 武器がなければガザの虐殺はなかった。 

 武器輸出に前のめりなのは、アメリカの要請があるからだ。イスラエルへの支援で足りない武器を日本から調達しようとする思惑に載せられてはならない。米国いいなりの日本の姿勢に問題の根っこがある。

▶ 『インタビュー 22世紀へ針路は』で、(財) 日本総合研究所会長の寺島実郎氏は「これからは国民の安全・安定のため、レジリエンス (耐久力) を重視する産業構造に作り替える必要があります。『食と農』『医療・防災』、そして支える人材を育てる『教育・文化』が重要産業になると思います」「日本の食料自給率は極端に低い。特に大都市圏の状況は深刻です。こうした地域で増える高齢者も巻き込みながら、『生産・加工・流通・調理』という食のバリューチェーンに都市住民を参画させ、産業として育てていく」と語る。

 どのように人を育てるのか、新たな産業構造を育てる具体的なプランが課題だが、寺島氏の指摘を未来戦略化しなければならない。