この国のかたち(11) 危機が深化した年

 2023年は憂うべき事柄の、異常に多い年となった。振り返ることが苦痛にも思えるが、きちんと記憶に残さないといけない。

▶健康保険証が「2024年末に廃止」される。国民生活の混乱は増すばかり。マイナ保険証の11月の利用率はわずか4.33%。全国保険医団体連合会は「保険証廃止方針の撤回を」と訴える。現行保険証を残せば問題はすべて解決する。

▶免税事業者である零細業者やフリーランスからも消費税を徴収しようと、10月からインボイス制度が始まった。課税事業者登録を「してもしなくても」不利益を被り、廃業を迫られる人が続出。制度の複雑さも混乱を招いている。コロナ禍で世界108カ国・地域が付加価値税 (消費税) を減税したという。国民のために消費税を5%に下げればインボイスなど不要で、景気浮揚にもなる。有力な徴税先は他にある!

▶大学自治と学問研究の自由が死に際にある。国立大学法人法が改悪され、大学の自治がますます侵害される事態となった。さらに政府は学術会議の「法人化」方針を決定。これは政府介入のしくみを多々伴う。学術会議が政権の恣意的な操作を受ける恐れが増大し、学問研究の自律性が失われてしまいかねない。

▶大阪関西万博の経費が異様に膨れ上がり、会場建設費は2,350億円と当初予算の2倍、インフラ整備費は8,390億円、関連事業総額は9.7兆円に上るという。世論調査「不要だ」がいずれも7割近い。莫大な税金をIRカジノ (博打場) のために投入する馬鹿さかげん。即刻中止すべきだ。

▶2024年度予算案は、空前の軍事費8兆円に迫る異常事態となった。社会保障費、文教費、農業予算などがあおりを受ける。北から南まで自衛隊基地に弾薬庫が次々と新設され、オスプレイが飛び回り、南西諸島の軍事要塞化が進む。

自衛隊基地周辺などが対象の重要土地利用規制法による指定が400カ所となり、土地所有者の自由を奪い、住民監視が進む恐れが高まっている。

▶武器輸出禁止三原則が踏みにじられ、殺傷性のある武器の輸出が解禁された。平和憲法のもと、平和国家として尊敬を集めていた日本の姿が変貌する。

辺野古の海の埋め立てに異議をとなえ続けてきた沖縄県自治が踏みにじられ、北側海域の埋め立てが12月28日国権により代執行された。沖縄の民意を押しつぶす政権の暴挙。「代執行による新基地建設は、米国統治下に吹き荒れた『銃剣とブルドーザー』による強制土地接収を新たな形で再現するものだ」(沖縄タイムス12/28)。強権による代執行が、地方自治破壊の先例となるか。

 こんな風に、2023年は民主主義と平和国家の礎が強く大きく揺らぐ年となった。「“おかしい” と感じたときに声をあげないと、自由は狭められていく」(山崎裕侍さん、映画『ヤジと民主主義』監督)

 戒めにしなくてはならない。