環境問題と農業(3) 環境再生型有機農業(その二)

 家の前の畑2反3畝(23アール)を3年前から借地して「自給有機農園+ちょっと販売」を行っている。5アールほどを通路、資材置き場、堆肥場、育苗ハウスなどに使い、13アールくらいを野菜畑、5アールを無農薬果樹園にしている。

 かつて農業専門学校の教員だったことから、私の有機栽培はつねに “実験” を伴う。初めて個人菜園を手に入れたこの機会に “果樹の有機栽培” チャレンジを始めた。ずっと “自給くだもの” に憧れていたのだ。さらに、雑草の功罪を見極めるため除草か草活用かの試行錯誤、コムギやベッチを使うリビングマルチの試行など、いくつかのお試し栽培を織り交ぜている。

 ブドウ、柑橘などを植えたハウスの一画でトマト 不耕起栽培をしている。トマトの不耕起栽培は、教員時代の2001年から23年間ずっと続けているが、その理由は不耕起のメリットがとても多く、とにかく省力的で楽なことだ。

・トマトは、不耕起栽培にすると地上部病害が少なくなる

不耕起栽培でも収量が減ることなく、かえって増えることがある

不耕起栽培でトマトの糖度がアップする(味が濃くなる)可能性がある

・耕うん作業の省略、省力化で高齢の人でも無理なくできる

 以上が、23年間の不耕起栽培継続による経験知であり、自信を持って人にお勧めできる。方法を知ってしまえば、とっても手軽なのである。

 方法はこうだ。初年目は、2条植えにする畝(うね)の位置を決めて堆肥や有機肥料を畝幅に撒く。通路位置の土をすくって肥料の上に被せ、低いかまぼこ型の畝にする。ここに苗を植えて、畝面と通路にたっぷりと藁を敷く。2年目以降は、畝の中央の藁をどけて浅い溝を切り、ボカシ肥料を入れて埋め戻す。どけた藁と通路の藁を畝上に戻し、通路部分に新しい藁を補給する。苗の定植時、植え穴にたっぷりと潅水してから植えるだけで、その後の潅水はいっさい行わない。

不耕起栽培6年目(2006)

 敷き藁用に、私はコムギを栽培している。前年夏に農協から “クズ小麦” 数十㎏を購入しておいて、翌年のカボチャ、スイカ栽培予定地それぞれに11月、たっぷりとバラ蒔きしておく。5月中旬、乳熟期にコムギを刈り倒す。その1辺に畝を立ててカボチャ、スイカを植え、倒したコムギ藁の上につるを這わせる。トマトの敷き藁には、この刈り倒したコムギの一部を運んで使うのだ。クズ小麦は、キュウリ、ナス、ピーマン、オクラなど果菜類の畝間にも苗の定植と同時にたっぷり蒔き、リビングマルチに使っている。

  トマトの不耕起栽培は、2000年当時、学生の「耕さないと野菜は育たないんですか?」の問いがきっかけで始めた試みだった。「農業および園芸」誌80巻6号(2005)に成果の一部を発表した。先駆的な試みだったと自負している。