この国のかたち(10) 地球人を守る、未来人を守る

▶ ニューヨークの国連本部で開かれていた核兵器禁止条約第2回締約国会議が1日、閉幕した。2021年1月に発効した条約には、93カ国・地域が署名し、うち69カ国・地域が批准している。今回の会議には加盟している59カ国・地域が参加したほか、35カ国がオブザーバー参加している。

 米国の「核の傘」に入るドイツやノルウェーなどもオブザーバー参加しているが、唯一の戦争被爆国である日本は今回も参加しなかった。被爆者団体「日本原水爆被害者団体協議会 (日本被団協)」など市民団体やNGOなどの参加者は、締約国から「なぜ核廃絶を唱えながら (一方で日本国は) 核抑止政策を支持するのか」と問われたという。わが国の姿勢は恥ずべきことだと思う。

 閉幕宣言では「核兵器は平和と安全を守るどころか、強制、脅迫、緊張激化の政策手段に使われている」と批判し、核戦争のリスクが増大しているとして「人類が核の破局に近づく兆候を黙って見ているわけにはいかない」と表明している。ロシアによる核の威嚇など、キューバ危機以来の危険水域にあるという現状を、私たちも見過ごすことはできない。

 被爆者の一人サーロー節子さんは「禁止条約は私たちの導きの光であり、その強化へあらゆることをしなければならない」と訴えた。黒柳徹子さんは「(日本は) 被爆国なのに、核兵器がどんなに恐ろしいものか分からない政治家がいるんだったら、それは何よりも愚かだと思います」と述べている。

▶ 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議 (COP28) が、11月30日からアラブ首長国連邦 (UAE) で開催されている。核禁条約締約国会議とならび、地球人の未来を守るためのきわめて重要な会議である。注視しないわけにはいかない。

 首脳級会合で、ブラジルのルラ大統領は「世界は昨年2兆ドル (約300兆円) 以上を兵器に使った。なぜそれを飢餓や気候変動対策に使わないのか」と発言し、コロンビアのペトロ大統領は「人類の最富裕層による炭素に基く消費は、他者の死に基く消費だ」と富裕国の化石燃料大量消費を批判したという。

 岸田首相も参加し「世界はまだ1.5℃目標の道筋に乗っていない」として温室効果ガス削減に言及したが、G7で唯一、石炭火力発電の廃止を明言しない。さらに、米国が呼びかけた「原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言に、日本を含む22カ国が賛同したという。

 岸田政権は、GX (グリーン・トランスフォーメーション) 政策で原発を「最大限活用する」と原発回帰にかじを切っている。石炭火力にも、原発にもしがみつく世界でも異常な日本の姿は、各国から不信の目で見られている。私たち国民の求めるところとも乖離している。

<12月3日、朝刊2紙から拾った>