期待される農へ(1) 農業協同組合(その二)

 協同組合の存在意義が世間に伝わらなくなってきた、と前話で書いたが、それは農協職員自体の理解についても言えるかもしれない。かつての農協職員は、その多くが農家生まれの人々だった。その時代は、職員が家に戻れば農家(組合員)の家族として農協の恩恵と意義をストレートに理解できた。しかし、今の農協のスタッフはおそらく大半が非農家出身者である。協同組合の意義は、就職してから研修で教わる内容になったのだ。実感は薄いだろう。一般私企業と協同組合の本質的な違いをきちんと理解してもらうためには、何が必要か。

 協同組合の定義、協同組合原則というものがある。1995年、国際協同組合同盟(ICA)の100周年大会で決められたものだという。

<協同組合の定義>

 協同組合は、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治的な組織である。

<協同組合原則>

第1原則 自発的で開かれた組合員組織 ― 非差別、意志ある全ての人々に開放

第2原則 組合員による民主的管理 ― 意思決定への参加、一人一票の議決権

第3原則 組合員の経済的参加 ― 公平な出資、協同財産、利用高に応じた組合員還元

第4原則 自治と自立 ― 自治的な自助組織、協同組合の自主性

第5原則 教育、訓練および広報 ― 関係者の教育訓練、一般の人々に協同組合運動の意義を広報

第6原則 協同組合間協同 ― ローカル、ナショナル、リージョナル、インターナショナルな組織協同

第7原則 コミュニティへの関与 ― コミュニティの持続可能な発展のための活動

 第1から第4までは原則中の原則である。近年は、第4原則が政治に翻弄されて農の自律的発展を損ねている。農外産業の要請を優先して農からの搾取を黙認しているのだ。

 農協側の課題として、協同組合の意義をより効果的に運用するために第5から第7の原則を日常運営の中でしっかりと行動に表しているかどうか、がある。関係者の教育訓練、農の人づくり、市民に向けた広報のあり方、地域社会への関与の仕方、等々。課題はとても多いが、すべてその都度、原則に立ち戻って議論し、行動することが要諦だろう。