環境問題と農業(4) 二季化への対応

 「今年の夏は暑かった」は毎年のように使われてきたフレーズだが、2023年は表現を変えなければならない。「今年の春、夏、秋は異常に熱かった」

 今年の平均気温は、春、夏、秋と3季連続で統計開始以来の最高記録となり、平年を1.34℃も上回った (11月末時点)。世界の年間平均気温も0.53℃高く、観測史上最も暑い1年間だった。米国の研究組織の報告では、産業革命前から1.32℃高くなったという。

 グテレス国連事務総長が「地球沸騰化の時代」といい、山火事が大規模化し、各地で干ばつが常態化しつつある。氷河の融解、海表面の上昇で太平洋の島嶼国は水没の危機に直面している。さらに世界中で真水の危機が表面化している。湖沼が干上がり、地下水の枯渇で農業用水の不足が深刻化し、干ばつとともに世界の食料危機のリスクを高めている。

 災害の多い日本では、ゲリラ豪雨や線状降水帯という言葉が常態化して農業生産にも大きな被害をもたらすようになった。さらに今年は、春から秋にかけての高温乾燥によって水稲、野菜、果樹にさまざまな障害が発生した。

 朝日新聞の「耕論」で、気象学者の立花義裕さんが次のように述べている。「近年、夏の暑さは10月11月まで尾を引くことが多いので、秋がどんどん短くなり、さらに冬は徐々にではなく、一気に春に変わる年が多い。ゴールデンウィーク前後から暑くなり、気づけば春の気配は消えています。私は、日本の四季が『二季』化すると表現しています」「もはやこの変化は『異常気象』ではなく『ニューノーマル化』と考えるべきでしょう」(12月19日)。

 農業における温暖化対策は、二方面からの行動が迫られている。緩和策と適応策のことである。緩和策は、農業生産における温室効果ガスの排出削減とCO2吸収策の推進である。農業生産における省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーを活用する農法への転換。草生栽培里山資源との統合などCO2吸収農法を進めることである。

 適応策は、気象災害や高温乾燥など悪影響への備えと、新しい気象条件に適応できる生産技術の開発と普及を図ることである。治水対策を徹底し、農作物の高温障害対策、生態系の保全と活用など生産方法の大転換が迫られている。

 立花さんも「農業への影響は深刻です。猛暑は米どころに打撃を与え、分布を変える可能性があります。地球沸騰化で、世界中が猛暑や洪水、ハリケーンに襲われる中、自給率が高くない日本は食料問題への対策も急務です」(同上) としめくくっている。

農業への影響に警鐘