環境問題と農業(4) 二季化への対応(その二)

 農業における気候変動の緩和策については、このブログでその技術改変あるいは経営のあり方を縷々述べてきた。低投入持続的農業すなわち有機農業への農法転換が必須で、さらには不耕起栽培をベースとする環境再生型農業にコマを進めること。大規模法人経営はエネルギー収支に不都合があることから、できるだけ小規模家族経営の低投入型農業を重視し推進すること、が緩和策の基本となると。

 次の課題が適応策の手法である。適応策を考えるためには、作物栽培に及ぼしている気候変動の影響を具体的に確認しなければならない。

 年平均気温が大幅に上昇し、▶作物の適地が北の方向に大きく移動してきたこと。▶春から秋まで高温時期が長期間続き、作物にさまざまな高温障害が発生していること。▶長期の高温期間によって害虫の発生が激化かつ長期化していること。この3つの問題に対処が必要になっている。

【適地の移動】新たな適作物の探索と実証、そして普及 (例えば低温性作物のより高地への移動、関東以北で熱帯性作物・温暖地作物の導入など)

【高温障害対策】高温耐性を持つ品種の開発と普及、地温と気温上昇の抑制技術 (例えば草生栽培、ソーラーシェアリングや林間栽培など遮光諸技術)

【害虫対策】ほ場衛生の徹底、物理的防除の徹底、害虫繁殖サイクルの遮断、作付け時期の移動、より効果的な天敵の誘導と活用、等

 私の地元でも、有機農家が虫害の激発に苦しみ、技術の見直しを迫られている。一昨年より昨年、さらに今年と、害虫被害が激化しているのだ。育苗時から完ぺきに防虫ネットで対策したキャベツ、ブロッコリーがネット内でハスモンヨトウに食い荒らされる始末である。土を介してネット内で繁殖している。春の虫の発生時期が早まり、産卵と羽化が秋まで途切れずに多サイクル化したと考えられる。化学合成農薬に頼らない有機栽培ゆえの新たな苦難である。

 農家と次のような適応策を話し合っている。①春作と7月蒔きの秋作のは種、植え付け時期を1~2週間早めること、あるいは秋作の植え付けを思い切って後ろに遅らせること、②収穫後はできるだけ速やかに残渣を片付けること、③イネ科マメ科の緑肥作物を輪作体系に組み入れ、特定害虫の繁殖サイクルを断ち切ること、④土着天敵の活動を促すバンカープランツ技術を駆使すること、⑤新たに圃場を入手して休閑圃場を設けること、などである。

 気候変動が早すぎて対策が追いつかない。有機農業への研究と普及の取組みが遅きに失している今、有機農家自らが経験にもとづいて必死に対策しようとしている。

有機農家自らが様々な新技術を編み出している。公的な技術開発を待ってはいられない。諸外国の対策も参考になる。(中南米諸国の有機栽培の写真は矢澤佐太郎氏の「諸外国の有機農業」発表資料から引用)